おはようございます。
さて、今日は、工事代金の架空請求等による詐欺と解雇に関する裁判例を見てみましょう。
ダイフク事件(東京地裁平成22年11月9日・労判1016号84頁)
【事案の概要】
Y社は、諸機械、器具および電気機械、器具の製造販売等を目的とする会社である。
X1は、Y社の国内工場の現場担当者であり、X2は、Y社の従業員であった。
X1が行った行為は以下のとおりである。
(1)現場担当者の立場を利用して、数年にわたり取引先業者数社に対し、架空請求および水増し請求を指示したうえ、取引先業者へ多額の金銭等の利益供与要求を行い、受領した。
(2)国内の工場現場で勤務または滋賀の自宅へ帰宅したと虚偽の申請を行い、取引業者の仲間と業務とは何ら関連のないタイ国へ旅行した。
(3)据付工事現場での宿泊場所として、取引先負担でウィークリーマンションを手配させたうえで宿泊したにもかかわらず、会社へ宿泊費の請求をした。
Y社は、X1を上記事実を理由として懲戒解雇した。
X2が行った行為は以下のとおりである。
(1)不明な金銭200万円を元従業員のX1からX2名義の郵便局口座に振込の方法により受け取ったにもかかわらず、弁護士の調査に対し、振込を受けた事実はない旨、虚偽の事実を述べた。
(2)自宅テレビのレシートを元従業員のX1に提供するなど、不正にX1が利得を得る相談に応じた。
(3)無関係のY社の製造番号を使用し、事務用品や湯茶を購入した。
Y社は、X2を上記事実を理由として解雇した。
X1及びX2は、本件(懲戒)解雇は無効であると主張し、争った。
【裁判所の判断】
X1に対する懲戒解雇は有効
X2に対する解雇も有効
【判例のポイント】
1 X1の一連の行為は、いずれも刑事上の犯罪を構成するか、それに匹敵するものであり、就業規則の懲戒解雇事由に該当することが明らかである。そして、本件懲戒解雇を無効というべき証拠はないから、X1の請求は、いずれも理由がない。
2 本件解雇の根拠規定(パートタイマー就業規則)が提出されていないが、X2の行為は、社会通念上、解雇事由に該当するものと考えられる。そして、本件解雇を無効というべき証拠はないから、X2の請求は、いずれも理由がない。
このような従業員の業務上の非違行為、犯罪行為には、厳しい態度で臨む必要があります。
これをなあなあにしてしまうと、他の従業員に悪影響を与えます。
また、本件では、Y社が、X1の不正請求による損害を下請業者らへ賠償したため、X1に求償金の請求を反訴でしました。
こちらは、当然、認められました。
会社としては、取引先との信用問題をできるだけ回避するために、迅速かつ適切に対応しなければなりません。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。