おはようございます。
さて、今日は、成果主義への変更に関する裁判例について見てみましょう。
滋賀ウチダ事件(大津地裁平成18年10月13日・労判923号89頁)
【事案の概要】
Y社は、事務用教育用機械器具、用具の販売等を目的とする会社である。
Xは、Y社の従業員である。
Y社は、平成14年~平成15年においては、売上げが減少し、約3500万円の赤字が発生した。そこで、Y社では、本件賃金規定の改定を行い、給与体系を変更し、能力給を引き上げる一方、効果係数の変更をするなどした。
また、Y社は、過度に不利益が及ばないように、3年連続で基本給の減額はしない、当該社員が受けた最高の基本給額を基準として、減額の累計がその1割を超える金額とならないこととする制限を設けている。
本件改定は、Y社の合同朝礼において説明され、減額の対象となった社員には個別に説明がされた。しかし、Xは納得しなかった。
Xは、Y社が行った賃金規定の改定は、不利益変更であり、効力が生じないと主張して、改定後の賃金と従前の賃金との差額を請求した。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件改定は、・・・Xにおいては、平成14年と15年は考課係数が同じであるのに、1万1700円の減額、翌平成16年は7200円の減額となっている点は、急激な不利益が生じたとみられる。
しかし、企業において大幅な赤字を計上するときに給与規定を改定して対応せざるを得ないのはやむを得ないことと考えられ、本件改定後も減額されたのは数名にとどまっていることからすれば、本件改定が給与を減額する目的のものとはいえず、本件改定は実質的には昇給の抑制に重点があり、さらに昇給を抑制した結果、成果主義を導入して、考課の結果をより直接に昇給に反映させて意欲を刺激しようとしたものとみられるのであって、その目的は不当なものではなく、減額の幅が大きいことも不利益の限度が過度にわたらないように前記のような一定の制限があること及び実際の運用からみて、本件改定それ自体を不合理なものとは評価できない。
2 減額となる対象者が少なく、減額の対象となると減額の幅が大きいことから、不利益を受けたXは、Y社の意に添わない同人を給与減額の対象とするため本件改定がされたと主張する。しかし、減額対象者が少ない前記の考課の結果からみて本件改定後も一定の減額対象者を必ず生じさせなければならないものではなく、Y社の考課方法自体が不当なものということはできないから、Xが実際上相当の不利益を受けることとなっても、それをもって本件改定自体を不合理なものと評価できないし、Y社のXに対する特定の意図、目的を認めるに足りる証拠はない。
3 したがって、本件改定は有効なものであり、Xはその適用を拒むことはできない。そして、他に本件改定後の給与規定の適用を障害する事情は窺えないから、Xの基本給等の差額の請求は理由がないことになる。
本件では、成果主義への変更を有効と判断しています。
上記判例のポイント2は、総論としての考え方として参考になります。
急激な賃金の低下が起こる場合に、いかなる措置を講じておくかと、裁判所が有効と判断しやすいか、という視点も大切です。
詳しくは、顧問弁護士や顧問社労士に相談してみてください。