Daily Archives: 2011年2月20日

労災42(三洋電機東京食品設備事件)

おはようございます。

今日は打合せが入っていません。

一日、書面作成といろいろな準備をします

今日もGさんに手伝ってもらいます。

Gさん、いつもありがとうございます

ちょっと疲れ気味ですが、へこたれません!!

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

三洋電機東京食品設備事件(横浜地裁平成21年2月26日・労判983号39頁)

【事案の概要】

Y社は、三洋電機等が製造・販売した業務用食品設備機器、厨房機器の技術的な保守・点検サービス等を業とする会社である。

Xは、Y社において、担当エリア内の顧客先を訪問するなどして製品の修理業務等を行うサブカスタマエンジニア(サブコン)として勤務していた。

Xの勤務形態は、1日の修理予定が存在しているものの当日の変更が常態化しており、また、Y社の24時間修理体制の下、勤務日については24時間待機とされ、月1、2回程度、緊急の修理要請に応じて深夜・早朝修理に赴くことを余儀なくされていた。さらにXは、1週間に1回程度と頻度は低いものの、夏季の30度前後の環境の中、零度前後の冷凍倉庫内において修理業務を行うこともあった。

Xは、自宅において、高血圧性脳出血を発症し、重度の右片麻痺と失語症を発症して休業した(発症当時55歳)。

Xは、本件疾病を発症して休業したことについて、労災保険法に基づく休業補償給付を請求したところ、相模原労働基準監督署長から不支給決定を受けたため、その取消しを求めた。

本件争点は、本件疾病の業務起因性であるが、その中でも、Xの実労働時間および時間外労働時間の推計が特に争われた。

【裁判所の判断】

相模原労基署長による休業補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 脳血管疾患は、その発症の基礎となる血管病変等が、主に加齢、食生活、生活環境等の日常生活による諸要因や遺伝等の個人に内在する要因(基礎的要因)により、長い年月の生活の営みの中で徐々に形成、進行及び増悪するといった自然の経過をたどり発症するものである。
しかし、業務による過重な負荷が加わることにより、発症の基礎となる血管病変等をその自然の経過を超えて著しく増悪させ、脳血管疾患を発症させる場合があるとされる。

2 業務の過重性の判断に当たっては、発症前6か月間における就業態様について、労働時間、勤務の不規則性、拘束時間の長さ、出張の多さ、交代制勤務や深夜勤務の有無・程度、作業環境(温度環境、騒音、時差)、精神的緊張を伴う業務か否かなどの諸要素を考慮して、総合的に評価することが相当である

3 Xの労働時間について、Y社は、Xの出退勤時間を管理しておらず、Xの出退勤時間を明らかにする客観的証拠はないことから、Xの労働時間については、客観的に明らかとなっている個々の作業時間から推計せざるを得ない。そして、かかる推計に当たっては、本件推計時間表、Xの各作業の件数、サブコンの各作業1件当たりに要する時間等をもとに、事務作業、修理および移動、連絡、ミーティング、部品購入といった個々の作業に要する時間を集計するという方法によりXの実労働時間を推計し、実際のXの時間外労働時間は発症前6か月間平均で1か月当たり約108時間であると認めるのが相当である。

4 上記のような恒常的な長時間労働は、その労働密度や休日数の少なさを併せ考慮すると、Xに対し、強度の身体的・精神的負荷を与え、著しく疲労の蓄積をもたらすものであったと言わざるを得ず、また、Y社の24時間の修理体制の下、Xの勤務の不規則性は、相当程度のものであったというべきであり、さらに、夏季の冷凍倉庫内における修理業務がXの脳疾患を誘発ないし増悪させた可能性も否定できない
そして、Xは、上記のような恒常的な長時間労働等に従事する中で、体調不良を訴えるようになり、本件疾病発症日前日まで20日間に及ぶ連続勤務に従事した後、本件疾病を発症したこと等を総合考慮すると、Xの業務は、客観的にみて、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務であったというべきである。

本件裁判例は、会社が、労働時間について適切な管理を怠っていた場合について、とても参考になる判断をしています。

被災者側は、客観的に明らかとなっている個々の作業時間から推計するという方法は、強く主張していくべきです。

会社側の「実労働時間が不明である」との主張が通ってしまうのであれば、しっかり労働時間を管理している会社が馬鹿を見ることになり、不当です。

推計作業は、とても骨の折れる作業ですが、ここで努力を惜しんでいけません。

裁判所に「必ず労災と認めてもらう!!」という熱意を示しましょう。

決してあきらめてはいけません!!