おはようございます。
さて、今日は、割増賃金に関する裁判例を見てみましょう。
SFコーポレーション事件(東京地裁平成21年3月27日・労判985号94頁)
【事案の概要】
Y社の元従業員であるXが、Y社に対し、未払いの時間外・深夜労働割増賃金手当等の請求をした。
Xには、毎月約32~82時間前後の時間外労働があった。
Xには、管理手当が支給されていた。
Y社給与規定には、「管理手当は、月単位の固定的な時間外手当(給与規程16条による時間外労働割増賃金および深夜労働割増賃金)の内払いとして各人ごとに決定する」「給与規定16条に基づく計算金額と管理手当の間で差額が発生した場合、不足分についてはこれを支給し、超過分について会社はこれを次月以降に繰り越すことができる」との規定がある。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、管理手当は外勤・内勤にかかわらず一律支給されているなどとし、管理手当は割増賃金の性質をもたず、違法であると主張する。
しかしながら、X主張の事実を斟酌しても、管理手当が残業代の内払たる性格を否定することはできないのであって、給与規定の記載等に照らせば、Xの前記主張は採用することができない。
2 給与規定17条2項は、計算上算定される残業代と管理手当との間で差額が発生した場合には、不足分についてはこれを支給するとしつつ、超過分についてはY社がこれを次月以降に繰り越すことができるとしているのであり、別紙「割増賃金計算表」記載のとおり、未払の時間外・深夜労働割増賃金は存しないものと認められる。
会社としては、大変参考になる裁判例です。
書店で売っている就業規則関連の本には、ほとんど掲載されており、既に取り入れている会社も多いと思いますが、念のため。
まず、残業代の内払いとする場合には、基本給と明確に区別できるような形で規定しましょう。
次に、超過分は、次月以降に繰り越すことができるという規定を入れておきましょう。
当然のことながら、不足分が出た場合には、きちんと残業手当を支払いましょう。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。