おはようございます。
さて、今日は、昨日に引き続き、年功序列型から能力・成果主義型への変更に関する裁判例を見てみましょう。
ハクスイテック事件(大阪高裁平成13年8月30日・労判816号23頁)
【事案の概要】
Y社は、化学製品製造・販売とする会社である。
Xは、Y社の従業員として、Y社の研究所に勤務していた。
Xは、年功序列型体系から能力・成果主義型賃金体系への変更を目指した給与規定の変更につき、新たに導入された給与規定の無効確認を求めた。
【裁判所の判例】
年功序列型から能力・成果主義型への給与規定変更は、合理性を有する。
【判例のポイント】
1 Y社が給与の低下分について調整給や1~10年間分の減額分補償措置を設けていることに加え、B評価以上になれば賃金が減額することはなく、最低のFランクに位置づけられても月額賃金は38万5000円を下らない。
2 Y社の経営状態がいわゆる赤字経営となっている時代には、賃金の増額を期待することはできないというべきであるし、普通以下の仕事ができない者についても、高額の賃金を補償することはむしろ公平を害するものであり、合理性がない。
3 現に8割程度の従業員は新給与規定で賃金が増額しているのであって不利益は小さい。
4 近時我が国の企業についても、国際的な競争力が要求される時代となっており、一般的に、労働生産性と直接結びつかない形の年功型賃金体系は合理性を失いつつあり、労働生産性を重視し、能力・成果主義に基づく賃金制度を導入することが求められていたといえる。そして、Y社においては、営業部門のほか、Xの所属する研究部門においてもインセンティブ(成果還元)の制度を導入したが、これを支えるためにも、能力・成果主義に基づく賃金制度を導入する必要があったもので、これらのことからすると、Y社には、賃金制度改定の高度の必要性があったということができる。
本件裁判例の請求は、「就業規則無効確認」です。
このような請求のしかたもあるんですね。
本件は、上記判例のポイント3が大きいですね。
会社側としては、一般論も、大変参考になりますね。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。