労災39(S学園事件)

おはようございます。

昨夜は、久々に税理士のK山先生とTさんと飲みに行きました

K山先生、ごちそうさまでした!

いろいろとやらなければいけないことがありますね・・・

がんばろ!!

今日は、午前中は、書面を作成します。

午後は、判決を聞いて、そのまま原告の方と一緒に県庁で記者会見です

夜は、裁判の打合せです。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、労災に関する裁判例を見てみましょう。

S学園事件(大阪地裁平成22年6月7日・労判1014号86頁)

【事案の概要】

Y社は、高等学校卒業生を対象とした分析化学の教育指導を行うことを目的とする2年制の専修学校である。

Xは、Y社に専任講師として雇用され、Y社が設置する専門学校で稼働していた。

Xは、うつ病を発症し、それにより休業を余儀なくされた。

【裁判所の判断】

天満労基署長による休業補償給付不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 業務と精神障害の発病との間の相当因果関係を判断するに当たっては、今日の精神医学において広く受け入れられている「ストレス-脆弱性」理論、すなわち「環境由来のストレスと個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり、ストレスが非常に大きければ、個体側の脆弱性が小さくても精神障害が起こるし、逆に脆弱性が大きければ、ストレスが小さくても精神障害が起こる」という考え方に依拠するのが相当である。そこで、同理論を踏まえると、業務と疾病との間の相当因果関係の有無の判断においては、ストレス(業務による心理的負荷と業務以外の心理的負荷)と個体側の反応性、脆弱性とを総合的に考慮し、業務による心理的負荷が、社会通念上、精神障害を発病させる程度に過重であるといえる場合は、業務に内在又は随伴する危険が現実化したものとして、当該精神障害の業務起因性を肯定することができる。これに対し、業務による心理的負荷が、社会通念上、精神障害を発病させる程度に過重であると認められない場合は、精神障害は業務以外の心理的負荷又は個体的要因に起因するものといわざるを得ないから、業務起因性を否定することとなる。

2 なお、被告が判断基準として主張する判断指針は、労働者災害認定のための行政の内部指針であって、大量の事件処理をしなければならない行政内部の判断の合理性、整合性、統一性を確保するために定められたものであるが、基準に対する当てはめや評価に当たって判断者の裁量の幅が大きく、また、業務上外の各出来事相互の関係、相乗効果等を評価する視点が必ずしも明らかでない部分がある
以上のような判断指針の設定趣旨及び内容を踏まえると、裁判所の業務起因性に関する判断を拘束するものではないといわなければならない。

3 Xは、少なくとも後期授業が開始した平成14年9月12日から本件引率業務のためイギリスへ出発する前日の平成15年2月14日までの間、量的(労働時間)にも質的(業務内容による精神的負担感や緊張感が伴うもの)にも過重な労働を行い、心身の疲労が蓄積していたにもかかわらず、初めての海外経験である本件引率業務に従事し、さらに、帰国当日の同年3月11日から休む間もなく連日多岐にわたる業務をこなして、心身の疲労が頂点に達した同月16日及び同月17日の両日に、Y学園長から他の教員らの面前で一日体験入学の準備に遅刻をしたことについて厳しい叱責を受け、遂にその限界を越え、精神障害を発病させたとみるのが自然である。そうすると、Xが本件学校において担当した業務は、社会通念上、本件精神障害を発病させる程度に過重な心理的負荷を与える業務であったと認めるのが相当である。

参考になるのは、上記判例のポイント2のいわゆる「ストレスの相乗効果」論です。

他の裁判例でもこのような言い回しをしているものもあります。

行政の判断指針が批判される点ですね。

労働者側としたら、この視点をもって、裁判で戦うべきです。

実際、判例のポイント3では、裁判所は総合的に判断しています。

それから、上記判例のポイント3に出てきますが、他の従業員の前で、叱責するのは、避けましょう。

誰だって、同僚の前で、叱責されたら、落ち込みます。