おはようございます。
さて、今日は、私傷病と解雇に関する裁判例を見てみましょう。
岡田運送事件(東京地裁平成14年4月24日・労判828号22頁)
【事案の概要】
Y社は、貨物自動車運送業等を業とする会社である。
Xは、Y社に雇用され、運送業務に従事していたが、平成11年7月、病院で脳梗塞の診断を受けてしばらく欠勤を続けたところ、Y社から無届欠勤で懲戒解雇する旨告げられ、その後、さらに解雇する旨の解雇通知書を受けた。
Xは、解雇後もY社の従業員たる地位を有することの確認、賃金の支払い等を求めた。
【裁判所の判断】
懲戒解雇は無効だが、普通解雇としては有効
【判例のポイント】
1 Xが、しばらく欠勤する旨を会社に電話で告げるとともに2度にわたって診断書を提出し、その後においては診断書を追加して提出すべきかどうか尋ねたところ、その必要はないと告げられていたにもかかわらず、「正当な理由なしに無届欠勤7日以上に及ぶとき」に該当するとしてなされた懲戒解雇は無効である。
2 懲戒解雇の要件は満たさないとしても、当該労働者との雇用関係を解消したいとの意思を有しており、懲戒解雇に至る経緯に照らして、使用者が懲戒解雇の意思表示に、予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合には、懲戒解雇の意思表示に予備的に普通解雇の意思表示が内包されていると認めることができる。
3 Y社は、脳梗塞を発症したXをもはや運転手として雇用し続けることはできないとの考えに基づいて、病気を理由とする退職勧奨を数回Xに対して行っていたものと認められるから、本件解雇通告および解雇通知書は、懲戒解雇の意思表示のほか、予備的に普通解雇の意思表示を含むものと認定でき、Xに本件解雇通告の時点で、トラック運転手としての業務に就くことが不可能な状態にあったと認められるから、「身体の障害により業務に堪え得ないと認めたとき」の普通解雇事由に該当する。
4 業務外傷病による長期欠勤が一定期間に及んだときは休職とする旨の規定があるからといって、直ちに休職を命じるまでの欠勤期間中解雇されない利益を従業員に保障したものとはいえず、使用者には休職までの欠勤期間中解雇するか否か、休職に付するか否かについてそれぞれ裁量があり、この裁量を逸脱した場合にのみ解雇権濫用として解雇が無効となる。
5 本件では、休職までの欠勤期間6か月間および休職期間3か月を経過したとしても就労は不能であったから、本件解雇に際し休職までの欠勤期間を待たず、かつ、休職を命じなかったからといって、本件解雇が労使間の信義則に違反し、社会通念上、客観的に合理性を欠くものとして解雇権の濫用になるとはいえない。
本件は、解雇を有効としたケースです。
懲戒解雇は無理があります。
復職の可否については、医師の判断に基づいて決定してください。
決して、社長の独断で決定しないでください。
なお、総務の方は、上記判例のポイント4は、おさえておくといいと思います。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。