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労働時間15(ハイクリップス事件)

おはようございます。

さて、今日は、継続雇用制度に関する裁判例を見てみましょう。

ハイクリップス事件(大阪地裁平成20年3月7日・労判971号72頁)

【事案の概要】

Y社は、いわゆる治験施設支援機関である。治験とは、医薬品等の承認申請に必要な臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施をいう。

Xは、准看護師免許を有し、病院勤務、他社での治験コーディネーター(CRC)業務等を経て、Y社に入社した。

Xは、Y社から懲戒解雇された。

Xは、解雇の効力を争うとともに、時間外手当等の請求をした。

Y社は、XのようにCRC業務に従事する従業員については、原則としてその業務が治験実施医療機関である病院で行われるものであることから、業務の実施方法や時間配分等についてY社の具体的な指揮監督が及ばない状況にあり、労働時間を算定することが困難であることから、事業場外労働のみなし労働時間制を適用している。

【裁判所の判断】

事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合にはあたらない。

付加金の支払いは相当でない。

【判例のポイント】

1 みなし労働時間制は、単に労働者が事業場外で業務に従事しただけでなく、労働時間を算定し難い場合に適用されるところ、Y社は、タイムシートを従業員に作成させ、始業時刻や終業時刻を把握していただけでなく、どのような業務にどのくらいの時間従事したかも把握していたことからうかがわれるように電子メール等の連絡手段を通じて業務上の連絡を密にとっていたものと認められること、タイムシートには、みなし労働時間制の適用を前提とした画一的な始業時刻と終業時刻を記載するよう指示するのではなく、原則として実際の始業時刻と終業時刻を記載するよう指示していたことからすると、Xについて、労働時間を算定し難い状況があったとは認められない。よって、みなし労働時間制の適用はない。

2 Y社の時間外手当等の不払いは、微妙な判断を要する面もあるみなし労働時間制の適用に関する誤解もあることからすると、Y社に付加金の支払いを命じるのは相当でない

事業場外みなし労働時間制の適用を否定した点については賛成です。

付加金の支払いを相当でないとした点は、他の裁判例と比較すると、会社に優しいな、と感じました。

この裁判例は、事業場外みなし労働時間制の争点以外にもたくさんの争点が含まれています。

その一つに、時間外労働に関し、タイムシート記載の移動時間や、Xが所長等により時間外に送信される電子メールに対応したり、電子メールの送信に備えて待機した時間も含めて、時間外労働の時間数を計算すべきと判断しています。

Y社は、時間外であってもXが応答することを予想したうえで、時間外に業務上の指示等を行っていたことが認められる等として、これらについては、Y社の黙示的指示により時間外労働に従事したものと判断しました。

会社にいなくても、メールのやりとりから時間外労働を認定されています。

会社としては参考にすべき点ですね。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。