おはようございます。
さて、今日は、雇止めに関する裁判例について見てみましょう。
アンフィニ(仮処分)事件(東京高裁平成21年12月21日・労判1000号24頁)
【事案の概要】
Y社は、労働者派遣事業を主な目的とする会社である。
Xらは、Y社と、派遣労働者として期間1年の有期雇用契約を締結し、A社に派遣されていたが、A社から発注量をほぼ半減させる旨の通告があったことを受けて、Y社は、Xらを含め全従業員との間で、順次個別に期間を半年とする雇用契約を締結し直し、Xらも同契約書に署名した。
Y社は、従業員らに対し、上積み条件のない希望退職の希望を通知したが、希望退職者がなかった。
そこで、Xらを含む22人の従業員を解雇した。
【裁判所の判断】
雇止めは無効
賃金の仮払いとして、5割の限度で仮払いを命じた。
地位保全の仮処分は認めなかった。
【判例のポイント】
1 Y社がXらに対してした解雇は、契約期間中の解雇であるから、やむを得ない事由(労働契約法17条1項、民法628条)があることが必要であるところ、A社からの発注額が減少したこと、相手方が解雇に先立ち、上積み条件なしに退職希望者を募集したが応募者がなかったこと、Y社が解雇の対象者を選定する基準として、(1)入社半年以内の者と(2)出勤率の低い者から順に合計26名に満つるまでとしたこと、Xらが同基準(2)に該当したことなどの事情は、これらをもってやむを得ない事由があるというに足りないものであることは、原決定の説示するとおりである。
したがって、Xらに対する解雇は無効である。
一審においても、「やむを得ない事由」の有無について検討されています。
一審の判断の要旨は以下のとおり。
人員を削減する経営上の具体的必要性が明らかではないこと、希望退職も募集期間が短期間で解雇の回避に向けた努力をつくしたものとは認められないこと、解雇対象者の選定の際にかかる基準を設けること自体は一定の合理性を有するものの、事前に何ら従業員に対する説明がないことなどから、Y者の解雇には「やむを得ない事由」があるとは到底認められず、無効である。
本件雇止めは、実質的には整理解雇です。
整理解雇の要件の厳しさがわかりますね。
Y社としても、いろいろ考えたのだと思います。
実際に、希望退職の募集や未消化有給休暇の補償を行っています。
それでもまだまだ足りないというわけです。
会社としては、整理解雇の手続について、よほど念入りに準備しなければ、まず無効となると思ってくださいませ。
有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。
事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。