おはようございます。
さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。
ドコモ・サービス(雇止め)事件(東京地裁平成22年3月30日・労判1010号51頁)
【事案の概要】
Y社は、NTTドコモ社の委託を受けて、関東甲信越地方の携帯電話料金の回収業務を行う会社である。
Xは、Y社との間で、契約期間1年の定めのある委嘱契約を締結し、携帯電話料金の回収業務を行ってきた。同契約は、これまで5回更新されている。
Xの賃金は、基本給およびインセンティブ(回収額に応じて支給される野能率給)などにより構成されていた。
Y社は、インセンティブを廃止を決定し、数回にわたり説明会を開き、Xらに対し、その廃止に伴う補償措置などの説明をした。
具体的には、廃止により失われる賃金などについては一定の補償措置をとる、その主なものは一時金の支給、基本給の増額、退職金積立制度や業績評価による昇給の導入などである。
しかし、Xは、Y社の説明に納得せず、インセンティブ廃止等に合意しない旨を回答した。
そこで、Y社は、Xを雇用期間満了により退職をしたものとして雇止めをした。
【裁判所の判断】
雇止めは無効
【判例のポイント】
1 実質的に期間の定めのない契約と変わりがないものとは認められないが、XとY社の間の雇用期間を1年とする契約は、期間満了1か月前までに双方から何らの意思表示がないときは更新されると定められていたこと、外勤パート従業員制度見直しの説明会において、当時の東京料金センター所長が、外勤パート従業員であった者に対し、60歳に達するまで契約更新ができると述べていたこと、Xは、これまで5回更新され、意思に反して更新されなかった者はいないこと、などの事実からすると、Xの雇用は、ある程度継続が期待されたものというべきであり、本件雇止めには、解雇権濫用法理の類推適用がある。
2 インセンティブ廃止等の必要性については、廃止の必要性があるとのY社の判断を直ちに不合理ということはできないが、回収コストの削減(Xらの賃金減額)もその廃止等の目的であったといえるから、必要性が認められるとしても、これに対する補償措置には相当高度の合理性が要求される。
3 補償措置等の合理性については、Y社が提案した補償措置などを全体的に観察すると、インセンティブの支給額が年々減少するという見通しに基づく将来の年収(試算)をも下回っており、平成17年、18年度の当期純利益が10億円を超えているY社の財務状況において、Xがこれに納得しがたいのはやむを得ないものと考えられるから、(Y社の試算が正しいとしても)補償措置等の相当高度の合理性があるということはできない。
4 手段・経緯の合理性については、Y社は、Xがインセンティブの廃止などに合意しない場合でも、就業規則や給与規程などを変更するなどして、Y社の目的であるXらの賃金減額を実現できたと考えられるところ、そのような方法をとらず、Y社の提案に合意しないXを、雇用期間満了による退職と扱って雇止めするのは、雇用期間満了の機会を捉えてY社から排除したものと認められるのであり、手段・経緯に合理性を欠く。
このケースは、労働条件の変更に応じないことを理由とする、有期雇用の嘱託社員に対する雇止めの事案です。
判例のポイント4は、非常に参考になります。
また、会社としては補償措置を講じたからいいではないか、と思いたいところですが、その補償措置が十分でないと判断される可能性があります。
会社側とすれば、程度が難しいところですね。
有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。
事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。