Daily Archives: 2010年11月23日

有期労働契約5(東京都自動車整備振興会(嘱託職員)事件)

おはようございます。

さて、今日は、有期雇用契約における期間途中での解雇に関する裁判例を見てみましょう。

東京都自動車整備振興会(嘱託職員)事件(東京高裁平成21年11月18日・労判1005号82頁)

【事案の概要】

Y社は、国土交通省関東運輸局管轄の公益社団法人であり、道路運送車両法により、自動車の整備に関する設備の改善及び技術の向上を促進し、並びに自動車の整備事業の業務の適正な運営を確保するとの趣旨の下に、意見の公表等を行うこと、必要な調査研究等を行うこと等を事業目的とすることが法定されている。

Xは、Y社との間で、嘱託雇用契約書により雇用契約を締結し、専任講師として勤務してきた(期間1年。更新可)。

Y社の就業規則上、正職員には60歳定年制度が導入されているのに対し、1年間の嘱託雇用期間を、65歳まで更新していく者が多かった。

Xは、定年に達するまでに、17回にわたり契約更新をしてきた。

Y社は、Xに対し、Xが満60歳に達し、雇用契約が終了する旨の通知を交付すると同時に、再雇用嘱託契約書(雇用期間1年。65歳まで更新可)を提示した。

Xは、本件雇用契約では、Xが65歳まで勤務することが条件とされていたのであるから、契約終了には納得できない、今後も退職せず勤務を続けていく旨の意思表示をした。

【裁判所の判断】

1 本件雇用契約終了は、契約期間内の解雇にほかならない

2 本件解雇は有効

【判例のポイント】

1 Y社が、満60歳到達日での契約終了を通知したことにつき、本件雇用契約終了は契約期間内の解雇にほかならない。

2 本件解雇事由の存否につき、Y社は、改正高年雇用安定法の施行に伴って、正社員については、60歳での雇用契約終了とその後再雇用契約締結の制度を導入し、経済的事情から再雇用契約の給与額上限を従前の額を問わず月額25万円としたものであり、組織内の均衡を保つために、Xとの本件雇用契約(給与月額35万円)についても、上記上限額での再雇用契約締結を前提に、契約終了の告知をしたのであって、Y社には事業運営上やむを得ない事情があったといえ、本件解雇が客観的合理性あるいは社会的相当性を欠くとは認められない

裁判所の判断は妥当であると考えます。

第一審(東京地裁平成21年1月26日)では、解雇無効と判断されています。

高裁は、最後に以下のとおり判断しています。

「以上のとおりであって、Xの請求はいずれも理由がない。Xは、前記認定の社会経済情勢の変化等の諸制約をみないまま、公益法人であるY社組織全体の今後の在り方を度外視して、法的には本来1年の雇用期間でしかない契約であるにもかかわらず65歳まで継続勤務できる権利があるなどと強弁し、併せてY社の置かれた経済事情を踏まえれば証拠上合理性の認められないことが明らかな高額な給与を要求するという主張に終始して本件紛争を継続してきたものというほかなく、その方針は紛争の合理的解決から著しく外れるものといわなければならない。」

・・・なんか怒ってます?

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。