おはようございます。
さて、今日は、手待ち時間の労働時間制に関する裁判例を見てみましょう。
山本デザイン事務所事件(東京地裁平成19年6月15日・労判944号42頁)
【事案の概要】
Y社は、広告・印刷物に関する企画・製作、グラフィックデザインの制作及び販売等を業とする会社である。
Xは、Y社に入社し、コピーライターとして勤務し、入社から約2年半後、解雇された。
Xは、Y社に対し、時間外労働、休日労働および深夜労働に対する割増賃金の支払いを求めた。
【判例のポイント】
1 作業の合間に生じる空き時間は、広告代理店の指示があれば直ちに作業に従事しなければならない時間であると認められ、広告代理店の指示に従うことはY社の業務命令でもあると解されるから、その間はY社の指揮監督下にあると認めるのが相当であり、労働時間に含まれると認められる。
2 作業と作業の合間に一見すると空き時間のようなものがあるとしても、その間に次の作業に備えて調査したり、待機していたことが認められるのであり、なおY社の指揮監督下にあるといえるから、そのような空き時間も労働時間であると認めるべきであり、Xが空き時間にパソコンで遊んだりしていたとしても、これを休憩と認めることは相当ではない。
いわゆる「手待ち時間」も、労基法上の労働時間です。
問題は、待機している時間が「手待ち時間」といえるか否かです。
使用者の指揮命令下から現実に解放されているか否かがポイントですが、この基準も明確とはいえません。
どのような場合に、指揮命令下から現実に解放されているといえるのかについては、裁判例を検討し、把握するしかありません。
本件では、Xが空き時間にパソコンで遊んだりしていても、労働時間であると判断しました。
賛否両論あるところだと思います。
なお、このケースでは、未払割増賃金として、約910万円の支払いを命じられています(既払額控除前は約990万円)。
さらに、これに加えて、付加金として、500万円の支払いを命じられています。
合計約1500万円・・・すごい金額ですね
付加金に関する裁判所の判断は以下のとおりです。
Xをはじめとする従業員からY社に対して時間外勤務手当の支給及び人員不足の改善についての申入れがされていたにもかかわらず、ごく少額の休日手当等を支払ったことがあるだけで、Y社がそのいずれにも応じてこなかったこと、他方、労働基準監督署の是正勧告を受けた後は時間外勤務についての届出をするとともに、時間外勤務手当の支給についての是正が図られるに至ったこと等の事情に照らすと、労基法114条に基づく付加金として、500万円の支払を命ずるのが相当である。
労基署の是正勧告に従ったことから、付加金は約半分になりました。
やはり、労基署には逆らわない方がいいようです。
労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。