おはようございます。
さて、今日は、変形労働時間制に関する裁判例を見てみましょう。
日本レストランシステム(割増賃金等)事件(東京地裁平成22年4月7日・労判1002号85頁)
【事案の概要】
Y社は、多業態型レストランチェーンの経営を主な目的とする会社である。Y社は、「洋麺屋五右衛門」「にんにくや五右衛門」「卵と私」などを経営している。
Y社の就業規則には、1か月単位の変形労働時間制が規定されている。
Xは、Y社のアルバイト店員として、接客・調理を担当していた。
Xは、Y社に対し、未払残業代・賃金を請求した。
Y社は、「半月単位の変形労働時間制」を適法に導入しており、その点は労基署にも確認してもらったので、残業代の未払いはない、実労働時間はタイムカードではなくシフト表で把握しているので本給の未払いはない、と主張し争った。
【裁判所の判断】
未払残業代、未払時間給、付加金の支払いを命じた。
【判例のポイント】
1 Y社は、変形労働時間制を採用していた旨主張する。しかしながら、Y社が採用していた変形労働時間制は就業規則によれば1か月単位のそれであったのに、半月ごとのシフト表しか作成せず、変形期間全てにおける労働日及びその労働時間等を事前に定めず、変形期間における期間の起算日を就業規則等の定めによって明らかにしていなかったものであって、労基法に従った変形労働時間制の要件を遵守しておらず、かつ、それを履践していたことを認めるに足りる証拠もないから、変形労働時間制の適用があることを前提としたY社の主張は採用できない。
1か月単位の変形労働時間制の導入要件については、こちらを参照してください。
Y社(に限りませんが)としては、当日の来客数等に応じて、アルバイト従業員を臨機応変に使いたいと考えたのでしょう。
そのように考えるのは、使用者としては当然です。
ただ、残業代を支払いたくないからといって、要件を満たさないのに変形労働時間制を採用したのがまずかったわけです。
Y社が主張している労基署の確認ですが、労基署は、「就業規則にある1ヶ月単位の変形としては無効だが、実態としての半月単位の変形労働としては有効の可能性がある」と判断したそうです。
Y社の就業規則には、1か月単位の変形労働時間制が規定されている以上、実態がどうであろうと関係ありません。
会社としては、できるだけ残業代を支払いたくないという気持ちはわかります。
でも、要件を満たしていないで、形だけ変形労働時間制を採用しても、いつか従業員から裁判を起こされます。
労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。