Daily Archives: 2010年11月5日

管理監督者13(播州信用金庫事件)

おはようございます。

さて、今日は管理監督者に関する裁判例を見ていきましょう。

播州信用金庫事件(神戸地裁姫路支部平成20年2月8日・労判958号12頁)

【事案の概要】

Y社は、姫路市内に本店を置く信用金庫である。

Xは、Y社K支店の代理職にあり、店舗外に出て行う、いわゆる渉外業務の責任社であり、主として部下である渉外担当職員に対する指示・相談を行っていた。

K支店の管理職は、支店長、代理職のX、調査役という3名で構成されていた。

Xは、Y社退職後、Y社に対し、時間外割増賃金、付加金等の支払いを求めた。

Y社は、Xが管理監督者に該当する等と主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定し、時間外割増賃金(約350万円の支払いを命じた。

付加金として、100万円の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 Xの出勤時刻や退勤時刻は、金庫の開閉という仕事があるため、それを全く自由に決められるということはなく、また、出社中に関しても、渉外担当職員に対する指示・相談という業務があること、Xの机が支店長の斜め前にあることからして、自由にいわゆる中抜けということができたとも考えられない。したがって、Xが自己の勤務時間について自由裁量を有していたとは評価することはできない。

2 Xが行っていた渉外担当職員に関する人事評価についての支店長に対する意見の伝達も、書面として残るものではないので、その重要性は高いとはいえず、また、かかる意見伝達が、制度的組織的なものであるとは認められない。また、Xが内勤業務に関し、調査役に対し、指揮命令していたことも認められない。更に、Xが参加していた経営者会議も懇親会という色彩が強く、Xが支店長不在の時、参加したことがある支店長会議も各支店の報告会というものである。そして、Xが支店長不在の時、2回ほど代行した残業命令という業務も、K支店にはタイムカードがなく、出勤簿に出勤退勤時刻が記載されていないことからして、形骸化していると評価できる。したがって、XがK支店の経営方針の決定や労務管理に関し、Y社経営者と一体的な立場にあったとは評価することはできない。

3 Xの給与を、時間外勤務手当等が支給されている調査役と比較するに、Xが、本俸、役付手当及び特別残業手当を併せて36万5000円であるのに対し、調査役が、本俸及び役付手当を併せて35万8000円であり、その差はわずか7000円であり、管理監督者たる地位にふさわしい給与が支給されているとは評価することができない

4 付加金については、付加金制度は、法114条に規定する金銭給付について、その支払を確保することを目的とした制裁的性質を基本とするものである。
すると、本件において、労働基準監督署が、Xが管理監督者に該当しないこと及びXの労働実態について、どこまで正確に認識した上でのことかは疑問ではあるが、臨店調査をした労働基準監督署がXに対する時間外勤務手当等不支給に関し、指導・是正勧告をしたことはないこと、及びX自身、Y社在職中は、自分に時間外勤務手当等が支給されないことに関し疑問を感じていなかったこと等、本件に現れた諸事情を考慮すると、付加金は100万円の限度で支払を命ずるのが相当である

この程度では、残念ながら管理監督者とは認定してもらえません。

付加金は、約3分の1に減らされています。

労基署から指導・是正勧告をされたことが1つの理由となっています。

また、興味深い理由としては、X自身、Y社在職中は、自分に時間外勤務手当等が支給されないことに関し疑問を感じていなかったことがあげられています。

Y社の問題だと思うのですが、X自身の主観によって付加金の金額は変わってくるのですかね・・・。

会社側代理人としては、尋問で聞いてみてもいいかもしれませんね。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。