おはようございます。
さて、今日は管理監督者に関する裁判例を見ていきます。
神代学園ミューズ音楽院事件(東京高裁平成17年3月30日・労判905号72頁)
【事案の概要】
Y社は、音楽家を養成する専門学校である。
Xらは、Y社の従業員であり、それぞれ事業部長、教務部長、課長の職にあった。Xらは、既にY社を退職している。
Xらは、Y社に対し、時間外労働割増賃金等を請求した。
Y社は、Xらが管理監督者に該当する等と主張し争った。
【裁判所の判断】
管理監督者性を否定し、時間外割増賃金の支払いを命じた。
【判例のポイント】
1 管理監督者が時間外手当支給の対象外とされるのは、その者が、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また、そのゆえに賃金等の待遇及びその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が講じられている限り、厳格な労働時間等の規制をしなくてもその保護に欠けるところがないという趣旨に出たものと解される。
2 Xらは、いずれもタイムカードにより出退勤が管理され、出勤は他の従業員と同様の午前8時30分に余裕を持った出勤をしていた。
3 時間外労働等の実績に応じた割増賃金の支払を受けていた。
4 有給休暇の取得についても、特に他の従業員と異なる待遇を受けていたと認めるに足りる証拠はない。
5 X1は、Y社の教務部の従業員の採用の際の面接等の人選や講師の雇用の際の人選に関与し、教務部の従業員の人事考課及び講師の人事評価を行って、Y社社長に対し報告していた。
→しかし、X1が、Y社社長の指示や承諾を得ることなく、X1の裁量で教務部にかかわる業務を行っていた事実を認めることはできない。
6 X2は、経理支出について関与していた。
→しかし、X2が、経理にかかわる権限を一手に掌握し、Y社社長の指示や承諾を得ることなく、多額の出費をX2の判断で行っていたとの事実を認めることはできない。
7 結局、Xらは、それぞれ事業部長及び教務部長として、その業務遂行に対する職務上の責任をY社から問われることはあっても、その職責に見合う裁量を有していたものと認めるに足りる的確な証拠があるとはいえない。
「社長の指示や承諾を得ることなく」自分の裁量で決定できる人が、どれだけいるのでしょうか・・・。
ちょっと管理監督者の範囲が狭すぎるような気がしますが、いかがでしょうか。
管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。