おはようございます。
さて、今日は、試用期間中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。
ニュース証券事件(東京高裁平成21年9月15日・労判991号153頁)
【事案の概要】
Xは、Y社(証券会社)に営業職の正社員として中途採用された。
Y社には、6か月の試用期間がある。
勤務開始後におけるXの手数料収入は、Y社の期待を下回るものであった。
Y社は、試用期間中(3か月強)に、Xを試用期間中に不適と認められたとして解雇した。
Xは、Y社に対し、解雇無効を理由とする地位確認及び賃金請求をした。
【裁判所の判断】
解雇無効(控訴棄却)
【判例のポイント】
1 本件雇用契約書には、本件雇用契約におけるXの試用期間を6か月とする規定が置かれているところ、試用期間満了前に、Y社はいつでも留保解約権を行使できる旨の規定はないから、XとY社との間で、Xの資質、性格、能力等を把握し、Y社の従業員としての適性を判断するために6か月間の試用期間を定める合意が成立したものと認めるべきである。
2 そして、試用期間が経過した時における解約留保条項に基づく解約権の行使が、解約につき客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当と是認され得る場合に制限されることに照らせば、6か月の試用期間の経過を待たずしてY社が行った本件解雇には、より一層高度の合理性と相当性が求められるものというべきである。
3 Y社が、Xは適格性を有しないと判断して本件解雇をすることは、試用期間を定めた合意に反してY社の側で試用期間をXの同意なく短縮するに等しいものというべきであって、Xが業務上横領等の犯罪を行ったり、Y社の就業規則に違反する行為を重ねながら反省するところがないなど、試用期間の満了を待つまでもなくXの資質、性格、能力等を把握することができ、Y社の従業員としての適性に著しく欠けるものと判断することができるような特段の事情が認められるのであれば格別、合意した試用期間である6か月におけるXの業務能力又は業務遂行の状態を考慮しないでY社が行った本件解雇(留保解約権の行使)は、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当として是認することはできない。
この裁判例は、以前検討したニュース証券事件(東京地裁平成21年1月30日判決・労判980号18頁)の控訴審判決です。
結論としては、一審の判断が維持されました。
試用期間満了前に解雇をする場合には、「より一層高度の合理性と相当性」が必要であるといっています。
ここまで言われると、会社としては試用期間の途中で解雇することは非常に困難ですね。
従業員としては、この裁判例の理由付けは使えると思います。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。