おはようございます。
さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。
【事案の概要】
Y社は、プラスチック成形・加工等を業とする会社である。
Xは、Y社における工場の営業開発部長の職にあり、営業・商品開発業務を行っていた。
Xの基本給は、月34万円、管理職手当は月11万円であった。
Xは、Y社に対し、休日出勤による時間外賃金、付加金等を請求した。
Y社は、Xが管理監督者である等と主張し、争った。
【裁判所の判断】
管理監督者性を否定し、割増賃金の支払いを命じた。
付加金満額の支払いも命じた。
【判例のポイント】
1 Xの業務遂行に際して、大半の期間はXの業務は1人で遂行している。
月例で開催されるY社における経営会議において、Xは管理職としてメンバー召集されていたが、当該会議は各部門の業務遂行状況等の報告・掌握のための場として機能しているものの、重要事項の決定は取締役会においてなされ、経営会議で会社の経営方針等について決が取られるような決定機関として機能していなかった。
→XのY社への経営参画状況は極めて限定的である。
2 常時部下がいて当該部下の人事権なり管理権を掌握しているわけではなく、人事労務の決定権を有せず、むしろ、量的にはともかく質的にはXの職務はXがY社内で養ってきた知識、経験及び人脈等を動員して一人でやり繰りする専門職的な色彩の強い業務であることが窺える。
3 Y社の従業員の出退勤管理はタイムカードによる管理が原則となっていたところ、Xほか一部の者には、タイムカードが配布されずにいた。
Xは、住まいが遠方にあり、工場へは午前9時から9時30分の間に出勤しており、出勤が遅くなっているのに合わせて退勤時刻も一般の終業時刻より30分繰り下げて退勤していた。このような勤務状況にあることもあって、Y社のタイムカードによる自動処理に馴染まないことからXにはタイムカードが配布されていなかった。
→勤務時間も実際上は一般の従業員に近い勤務をしており、Xが自由に決定できるものではない。
裁判所は、Xには管理職手当が出されており、経営会議にも参加しており、タイムカードによる出退勤管理がなされていなかったにもかかわらず、管理監督者ではないと判断しました。
管理職手当は置いておくとして、経営会議の点とタイムカードの点については、原告側がその実態を主張立証したことにより、上記のような判断に至ったものです。
このように検討していくと、つくづく「管理監督者」の範囲は狭いな、と感じます。
なお、裁判所は、特に理由を説明することなく、付加金の満額を認めています。
管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。