おはようございます。
さて、今日も、管理監督者に関する裁判例を見ていきましょう。
日本ファースト証券事件(大阪地裁平成20年2月8日・労判959号168頁)
【事案の概要】
Y社は、有価証券の売買、有価証券指数等先物取引等を業として行う会社である。
Xは、Y社の大阪支店長として入社し、約1年後に退職した。
Xは、Y社に対し、休日出勤に対する時間外割増賃金等を請求した。
Y社は、Xが管理監督者に該当するなどと主張し、争った。
【裁判所の判断】
管理監督者性を肯定し、請求を棄却した。
【判例のポイント】
1 Xは、大阪支店の長として、30名以上の部下を統括する地位にあり、Y社全体から見ても、事業経営上重要な上位の職責にあった。
2 大阪支店の経営方針を定め、部下を指導監督する権限を有しており、中途採用者については実質的に採否を決する権限が与えられていた。
3 人事考課を行い、係長以下の人事についてはXの裁量で決することができ、社員の降格や昇格にういても相当な影響力を有していた。
4 部下の労務管理を行う一方、Xの出欠勤の有無や労働時間は報告や管理の対象外であった。
5 月25万円の職責手当を受け、職階に応じた給与と併せると賃金は月82万円になり、その額は店長以下のそれより格段に高い。
6 このようなXの職務内容、権限と責任、勤務態様、待遇等の実態に照らしてみれば、Xは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある管理監督者にあたるというべきである。
これらの判断とは対照的に、Xはさまざまな反論をしていますが、すべて認められていません。
例えば、
X 「外務員日誌の作成を求められるなど労働時間の管理を受けている。」
裁判所 「外務員日誌の作成が交通費の実費精算と営業経過の備忘のためであったことは、Xも認めているところであって、これをもって労働時間が管理されていたということはできない。」
X 「自らも降格処分を受けていることをもって、自身に人事権がなかった証拠である。」
裁判所「証拠によれば、Xの降格は、部下の営業成績が悪かったことに対する管理者責任を問われた結果であることが認められ、かえってXに支店の経営責任と労務管理責任があったことを裏付ける。」
X 「待遇としても、以前勤めていた会社では、Y社での給与より、残業手当込みで月額15万円以上高かったと述べ、Y社における待遇は高いものではなかった。」
裁判所 「賃金体系も契約内容も異なる会社での給与額だけを単純に比較して、その多寡を決することはできないし、Y社における月額80万円以上の給与が、Xの職務と権限に見合った待遇と解されないほど低額とも言いがたい。」
管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。