管理監督者6(ボス事件)

おはようございます。

さて、今日も引き続き、管理監督者に関する裁判例を見ていきます。

ボス事件(東京地裁平成21年10月21日・労判1000号65頁)

【事案の概要】

Y社は、コンビニや飲食店の経営等を目的とする会社である。

Xは、Y社経営のコンビニ(A店)の店長ないし副店長であった。

Xは、Y社に対し、未払給与、時間外手当、付加金等の支払いを求めた。

Y社は、Xは管理監督者に該当する等と主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定し、時間外割増賃金(743万円)の支払いを命じた。

付加金請求については棄却した。

【判例のポイント】

1 Xは、A店の店長として、店舗経営に一定の裁量があり、Y社全体の経営にも全く関与がなかったわけではない。

2 A店のアルバイトについてすら、募集、採用、解雇につき、実質的な権限があったとはいえず、また、人事考課への実質的な関与も認められない

3 店舗における労働時間の管理についても、労務管理の実質的権限はない

4 Xは、自らの出退勤もタイムカードによってY社に管理され、遅刻によって不利益な処分を受けたこともある

5 賃金面での待遇が、役職者以外の者と比べ、時間外勤務手当を支払わなくとも十分といえるほど厚遇されているとはいいがたい

6 以上からすると、Xは、Y社の店舗の店長として、A店の経営に一定の裁量権を有し、Y社全体の経営にも全く関与していないわけではないけれども、その権限、勤務態様、賃金等の待遇を考慮すると、管理監督者に該当するとまではいえないというのが相当である。

コンビニの店長で、この事案のように、ほとんど実質的権限がない場合には、管理監督者性は否定されます。

フランチャイズ契約上の制約がかなりありますね。

Y社は、6店舗のコンビニを経営しているようです。

今回認められた未払割増賃金は743万円

各店舗に店長がいるわけですから、単純計算、743万円×6人=約4500万円・・・

なお、この事案では、裁判所は、以下のとおり判断し、付加金の支払いを命じませんでした。

「Y社は各コンビニ店の責任者である店長を労基法41条2号の管理監督者と認識して時間外勤務手当を支払ってこなかったこと、店長としての業務の性質上当然に早朝又は深夜の勤務が予定されることから基本給とは別に店長手当を支払うことで早朝又は深夜勤務についての手当を支払う対応をしてきたこと所轄の労働基準監督署においてもY社の前記対応を認識した上、特段の異議を述べず、勧告、指導をしなかったことが認められる。
これらの事実からすると、Y社について、付加金という制裁を課すことが必ずしも相当とはいえないから、当裁判所は、Y社に対し、労基法114条に基づく付加金の支払を命ずることはしない。」

労基署の指導がなかったことが大きいのでしょう。

阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第1)事件と比較するとよくわかります。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。