おはようございます。
今日は、部下が不正経理に関する上司の責任についての裁判例を見てみましょう。
国際油化事件(福岡地裁昭和62年12月15日判決・労判508号10頁)
【事案の概要】
Y社は、石油類の販売等を業とする会社である。
Xは、Y社の従業員であり、入社12年目から、Y社福岡支店支店長となった。
Y社は、福岡支店において不正経理(架空売掛総額2億円超、流用された現金売上1億5000万円余)が行われたとして、Xを懲戒解雇した。
Xは、本社経理部の責任者は、本件に関し、役員報酬を、2ヵ月間、3%減額という極めて軽微な処分を受けたにとどまっており、これと比較すると、Xの処分は極めて重いもので、著しく均衡を失すると主張した。
【裁判所の判断】
懲戒解雇は有効。
【判例のポイント】
1 Xは、不正な経理操作を知ってから、本社がこれを発見するまでの間、本社に全く報告をしていない。
2 この間、監査役によって福岡支店の監査がなされ、また、本社から支店に対し、長期未入金につき報告を求められたが、このいずれのときにも、Xは、本件不正について触れなかった。
3 この間、Xは、不正の再発を防止するための方策を全くとっていない。
4 Xは、不正な経理操作を行った従業員が個人的出捐による補填をもって事態を隠蔽することを容認した。
5 Xは、福岡支店支店長として、支店業務全体を監督する職責を追っているのであるから、Xに対する処分が、経理本部長に対するものより重いものであることは合理性がある。
上司が、部下の不正行為を認識した場合には、直ちに会社に知らせましょう。
監督責任を問われる可能性があります。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。