おはようございます。
今日は、不正経理に関する最高裁判例を見てみましょう。
崇徳学園事件(最三小判平成14年1月22日・労判823号12頁)
【事案の概要】
Xは、Y学園の長期計画推進室長として雇用され、翌年からY学園の法人事務局次長を兼務していた。
Y学園は、Xが
(1)台風災害復旧工事に関し、法人事務組織規程、決裁規程、経理規程等に違反し、適切な事務処理、会計処理を行わず、またZ社に工事代金の不当な水増し請求をさせるなどしてその任に背き、Y学園に損害を与えた
(2)リース契約に関し、必要もないのにZ社を介在させ、虚偽の契約をっせるなどして不当な利益を得させた
(3)職務専念義務違反など日常の勤務態度が劣悪である
等を理由として、懲戒免職処分とした。
Xは、これを不当として、従業員たる地位の確認、賃金等支払いを請求した。
【裁判所の判断】
懲戒免職処分は有効。
【判例のポイント】
一審は、法人の重要な地位にあるXには、(1)の背任行為のみでも懲戒免職処分に値するなどとして、同処分を相当とした。
二審は、(1)~(3)の事由が就業規則所定の懲戒事由に該当することを認めつつも、(1)については、第一次的には経理課長に責任があること、XにZ社に不当な利益を得させる目的、意図がなかったこと、(2)については、Xが、Z社に不当な利益を得させるためにリース契約を締結したものではなく、また、適正な経理処理が行われなかったことには課長らにも応分の責任があること、(3)Xの勤務態度は劣悪とまではいえず、本来の業務遂行には問題がなかったこと、課長や局長には何らの懲戒処分がなされなかったことから、Xの懲戒免職処分は、無効と判断した。
そして、最高裁は、一審判決を正当と判断しました。
やはり、この横領や不正経理等に関しては、厳しい判断がされる傾向にあります。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。