おはようございます。
今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。
東大阪市環境保全公社(仮処分)事件(大阪地裁平成22年1月20日決定・労判1002号54頁)
【事案の概要】
Y公社は、東大阪市の環境を保全し、条件の整備を図り、市民生活の安全清潔を確保すること等を目的として、東大阪市の全額出資で、昭和47年に設立許可された財団法人である。
Y公社の業務内容は、東大阪市から委託を受けたし尿およびごみ収集業務等である。
Xらは、臨時雇用者(雇用期間6ヶ月)としてY公社との間で雇用契約を締結し、10回~24回、契約を更新してきた。
Y公社では、毎年4月と10月に契約更新手続がとられてきた。
Y公社は、Xらに対し、平成21年9月30日をもって契約期間が満了となり、それ以降は新たな契約は行わない旨を書面で通知した(本件雇止め)。
Xらは、臨時雇用者としての権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同雇用契約に基づく賃金の仮払いを求めた。
【裁判所の判断】
(1) 毎年10月1日の契約更新については特段の事情のないかぎり自動更新されるとの期待が生じており、本件雇止めについては、解雇権濫用法理の類推適用を検討する必要がある。
(2) 本件雇止めには、合理的な理由があるとはいえず、無効である。
【決定のポイント】
(1)について
1 毎年10月1日時点での契約更新については、特に継続雇用の意思確認等を目的とする面接を実施していない。
2 Y公社の業務が東大阪市から委託を受けたし尿収集等の作業であって、これらの業務にかかる予算等は1年間単位で計画等が策定・実施されるのが通常である。
3 毎年10月1日の更新手続は、形式的なものと言わざるを得ず、特段の事情のないかぎり、自動的に更新されるものと考えていたと認められる。
(2)について
1 Y公社は、本件雇止めの理由について、以下の3点を主張した。
① Y公社における平成20年度の累積債務が多額に上ること
② Xらが担当していた業務量の減少
③ 臨時雇用者について、日々雇用の代替策を提供していること
2 しかし、裁判所は、Y公社の主張に対し、以下のように判断した。
① 累積債務については、平成21年9月時点で発生したものとは言い難く、それにもかかわらず同年4月にはXらとの雇用契約を更新している。
② 業務量の減少の点については、東大阪市の予算状況等から、ある程度予想できたと考えられ、それにもかかわらず平成21年4月時点において、Xらと雇用契約を更新している。
3 これらの点からすると、上記③を考慮してもなお、本件雇止めには、合理的な理由があるとは言い難い。
なお、裁判所は、契約更新回数が10~24回と多いにもかかわらず、Y公社とXらとの間の雇用契約が期間の定めのない契約に転化しているとはいえず、毎年4月1日時点での契約更新手続については、自動更新されることに対する合理的な期待が存在していたとは認められないと判断しています。
理由は以下のとおりです。
1 雇用契約書に6ヶ月の雇用期間の記載があり、正社員とは明確に区別されている。
2 Y公社は毎年3月頃、継続雇用の意思等について確認する手続を行っていた。
3 Xらは臨時雇用者としての契約であり、就業規則上「一定期間を定めて雇用する者」と定められている。
Y公社が、4月の契約更新の際に、Xらを雇止めした場合には、有効となる可能性があるようです。
決定理由を読むと、Y公社がXらを雇止めした本当の理由は、別にあるようです。
裁判所は、Y公社の表向きの理由では、雇止めは無効と判断したわけです。
有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。
事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。