おはようございます。
今日は、事業場外みなし労働時間制に関する裁判例を見てみましょう。
和光商事事件(大阪地裁平成14年7月19日・労判833号22頁)
【事案の概要】
Y社は、金融業を営む会社である。
Xは、Y社の営業社員として外勤勤務を行っていた。
Xは、Y社退職後、未払いの時間外労働割増賃金の支払いなどを求めた。
Y社は、事業場外みなし労働時間制により所定労働時間労働したものとみなされるから、Xに時間外労働時間は存在しないと主張した。
【裁判所の判断】
事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合にはあたらない。
【判例のポイント】
1 Y社では、営業社員について勤務時間を定めており、基本的に営業社員は朝Y社に出社して毎朝実施されている朝礼に出席し、その後外勤勤務に出て、基本的に午後6時までに帰社して事務所内の掃除をして終業となる。
2 Xは、メモ書き程度の簡単なものとはいえ、その日の行動内容を記入した予定表を会社に提出し、外勤中に行動を報告したときは会社が予定表の該当欄を抹消していた。
3 営業社員全員に会社所有の携帯電話を持たせている。
以上の事情から、裁判所は、「労働時間が算定し難いとき」にはあたらないと判断しました。
なお、Y社は、上記の携帯電話の件について、「顧客から担当者にかかってきた電話を転送するためである」と主張しました。しかし、裁判所は、Y社が営業社員に対して携帯電話を使用して指示を与えていたこともあったことをX本人の尋問内容から認定し、Y社の主張を認めませんでした。
やはりよほど自由な外勤勤務でないと、「労働時間が算定し難いとき」にはあたらないようです。
これまでの裁判例を参考に、「うちの会社もこの程度だったら把握しているな」と思われる場合には、事業場外みなし労働時間制は使わないほうが無難です。
労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。