さらに裁判例をもう1つ見てみましょう。
サンマーク事件(大阪地裁平成14年3月29日・労判828号86頁)
【事案の概要】
Y社は、教育機器等の販売、通信販売業務等を行う会社である。
Xは、Y社の営業社員であり、情報誌の広告企画、営業活動、取材活動、原稿依頼等の職務を行っていた。
Xは、Y社に対し、時間外割増賃金の支払いを求めた。
Y社は、Xの職務はそのほとんどが事業場外で行うものばかりであり、「労働時間が算定し難いとき」に該当し、時間外手当が発生する余地はないと主張して争った。
【裁判所の判断】
事業場みなし労働時間制の適用を受ける場合にはあたらない。
【判例のポイント】
1 Xの事業場外における業務は、前日提出の報告書や当日の打合せで上司に把握されており、その結果も、訪問先における訪問時刻と退出時刻を報告するという制度によって管理されている。
2 同報告書には、訪問先すべてについて、訪問時刻と退出時刻、訪問の回数、見込み、結果、今後の対策等を記載するとされていたことから、Xが事業場外における営業活動中にその多くを休憩時間に当てるなど自由に使えるような裁量はなかった。
以上の事情から、裁判所は、「労働時間が算定し難いとき」にはあたらないと判断しました。
本件のような詳細な報告書の提出を義務付けている場合には、「労働時間が算定し難いとき」には該当しないようです。
やはりそう簡単には認められないようです。
労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。