会社が保険契約者(保険料負担者)兼保険金受取人、従業員が被保険者とする団体生命保険を結ぶことがあります。
この場合、被保険者が死亡した場合、保険金の大部分を会社が取得し、従業員の遺族には、一部しか支払われないことになります。
この状況に納得できない従業員の遺族が、会社に対して保険金の全部又は相当部分の支払いを求めて裁判を起こすことがあります。
この点について、最高裁判決が出されるまでの間、下級審判決においては、労使間の利害調整を図るために、会社と従業員との間に保険金引渡の黙示の合意があったことを理由として、従業員の遺族に対して保険金のうち社会的に相当な金額の範囲で支払うように判断するものもありました(住友軽金属工業事件:名古屋高判平成13年3月6日・労判808号30頁など)。
会社と従業員との間の合意という構成は、完全にフィクションです。
結論ありきです。
そして、平成18年にとうとう最高裁判決が出されました。
住友軽金属工業事件(最三小判平成18年4月11日・労判915号51頁)において、最高裁は、団体定期生命保険契約を公序良俗違反とはせず、会社と従業員との間に保険金引渡の黙示の合意があったことを否定して、遺族の会社に対する請求を認めませんでした。
最高裁としては、フィクションの構成は採用できないというわけです。
というわけで、団体保険については、判断が分かれていましたが、法的論争に一応の解決がつきました