不当労働行為2(B学園事件)

おはようございます。

今日は、労働組合の副執行委員長の解雇と不当労働行為に関する事案を見てみましょう。

B学園事件(神奈川県労委平成22年4月13日命令・労判1004号180頁)

【事案の概要】

B学園は、労働組合の副執行委員長の教員Xを懲戒解雇した。

解雇理由は、Xが、中3の生徒Aと携帯電話の通話や大量のメール送信(少なくとも1964通)をするという不適切な指導をしたこと。

組合は、本件解雇が労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であると主張。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

 B学園が、Xの行為を教師として不適切と判断し、処分したことは理解できる。

不当労働行為意思に基づく処分と判断することはできない。
(7条1号の不利益取扱いにはあたらない)

→B学園がXの組合活動等を嫌悪して、また組合の弱体化をねらって本件解雇を行ったものとは言えない。
(7条3号の支配介入にはあたらない)

労組法7条1号本文は、以下のように規定しています。
「労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。」

ここでいう「故をもって」とは、「そのことを理由に」、「そのことを動機に」という意味です。

これを一般に「不当労働行為意思」と呼んでいます。

不当労働行為意思の存在が、不利益取扱いが不当労働行為として成立するための要件です。

問題は、不当労働行為意思の認定方法です。

「意思」は、内心の気持ちですが、会社が、「あんた、組合員だから、解雇するよ」なんて言うわけがありません。

そのため、不当労働行為意思の認定は、さまざまな間接事実(状況証拠)から推認することによって行います。

今回問題となった、解雇は、客観的・合理的な理由があるということが重視されました。

これが、それほど重大な理由に基づかない解雇であれば、不当労働行為意思が認められる可能性があるでしょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。