Daily Archives: 2010年8月11日

継続雇用制度7(過半数代表の適格性・選出方法)

おはようございます。

今日は、労使協定の当事者についての話です。

労使協定の一般的な話ですので、継続雇用制度に限った話ではありません。

労使協定の労働者側当事者は、

1 「当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合

2 1のような労働組合がない場合は、「当該事業場の労働者の過半数を代表する者」です。

労働組合が優先される理由は、労働組合の方が過半数代表よりも、労働者の利益をより有効に代表するであろうという判断によります。

なお、1の「労働者の過半数を組織する労働組合」とは、当該事業場を単位に組織された労働組合(事業所別組合)や当該事業所における支部組織である必要はありません。企業全体を単位とする企業別労働組合や企業外の単一組合であっても構いません。

では、2の過半数代表の適格性・選出方法ですが、この点については、労働基準法施行規則が平成10年に改正されており、同規則6条の2第1項は、過半数代表者について、以下の2点を要求しています。

①「法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと

②「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること

トーコロ事件(最二小判平成13年6月22日労判808号11頁)は、労基法上のいわゆる三六協定の締結をめぐり、親睦団体の代表者が自動的に過半数代表になることはできないと判示しています。

労基法施行規則との関係でいえば、②の要件をみたしていませんよ、ということです。

過半数代表と労使協定を結ぶ場合には、上記①、②をみたしているかに注意しましょう。

へたしたら労使協定そのものが無効になってしまいます。

実際の対応は、顧問弁護士に相談をしながら慎重に進めましょう。

継続雇用制度6(京濱交通事件)

おはようございます。

継続雇用制度に関し、問題となった事件をもう1つ紹介します。

京濱交通事件(横浜地裁川崎支部平成22年2月25日判決・労判1002号7頁)です。

【事案の概要】

会社(タクシー会社)は、で、定年を60歳とし、再雇用制度を採用していた。

従業員は、タクシー乗務員として勤務していたが、会社の就業規則に定める再雇用基準を満たしていないことを理由とする再雇用を拒否された。

会社の各事業所のいずれにも労働者の過半数で組織する労働組合はなかった。

継続雇用制度の導入にあたり、労働者の過半数を代表する者は選出されておらず、会社が労働者側に対し、労働者の過半数代表者を選出するように要請したこともなかった。

会社は、「複数の労働組合の全組合員数の過半数との間で協定を結べば労使協定として有効に成立する」という労使慣行に則って協定を結んだと主張した。

再雇用を拒否された従業員は、再雇用拒否が無効であるなどと主張して、会社に対し、労働契約上の地位確認等を求めた。

【裁判所の判断】

請求認容(確定)

【判例のポイント】

1 会社には、労働者の過半数で組織する労働組合がなかった以上、高年齢者雇用安定法9条2項により継続雇用制度の導入措置を講じたとみなされるためには、各事業所ごとに全労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)との書面による協定により制度対象者の基準を定めて制度導入することが必要である。

2 会社において過半数代表者は選出されておらず、会社がなした労働者の過半数に満たない複数の労働組合との労使協定をもって制度導入に当たっての労使慣行として有効であるとはいえず、同法9条2項の要件を満たしていない。

結局、文言解釈をしたということです。
会社側代理人としても、なかなか厳しいところだったと思います。

過半数代表の適格性・選出方法についての問題は、最高裁判例(トーコロ事件)があります。

実際の対応は、顧問弁護士に相談をしながら慎重に進めましょう。