重要判例【大阪地判平成18年2月10日】71歳材木仕入れ販売業男子につき、確定申告の所得額である年170万円では生活困難として賃金センサスに基づき休業損害及び逸失利益算定

1 休業損害について

被告の平成13年分の確定申告における所得額が170万円であること、平成9年3月25日に1500万円、平成12年11月21日に450万円を借り入れるなどし、平成14年11月時点で借入残額がおよそ1400万円で、月々22万円、年額260万円あまりを返済している状態であったこと、本件事故当時、妻と孫2人の4人で生活していたことが認められるところ、月々の返済額や扶養家族の人数に鑑みると、確定申告の所得額である年170万円で生活して行くことは困難であり、少なくとも、年齢別平均賃金の385万3800万円程度の収入はあったものと認められる

被告は材木を仕入れて工務店に販売する商売をしていると認められるところ、陳述書や本人尋問において筏に乗る必要があるから、本件事故後症状固定の診断まで就労不能であったと供述するが、現在では筏に乗るような材木商は少ないこと、被告は移動手段に自転車を利用していることが認められることに加え、自動車の運転や材木の運搬、材木の加工に支障が出ているといった供述がないことや、確定申告の内容をみても在庫管理を行っているような様子がうかがえないことからすると、被告の仕事の内容は、材木を運搬したり、自ら設けた保管場所に材木を保管し、在庫管理をしたり、加工を行ったりすることは含まれておらず、仲介を行うに過ぎないものと推認するのが相当である。

被告の膝の挫傷の程度が、軽微であったと認められること、被告の仕事が材木の運搬等を伴うものではないことに鑑みれば、本件事故から症状固定までの労働能力喪失の程度は、最初の1か月が100%、その後の2か月が50%、最後の3か月が30%と認めるのが相当である。

2 逸失利益について

被告の膝の挫傷の程度は軽微であったと認められるが、本件事故以前に右膝の痛みを訴えていたと認めるに足りる証拠はないこと、被告の主訴としては痛みが続いており、その後の治療でも軽快することがないまま経過していること、症状固定時にわずかではあるか可動域の制限も認められると、MRI画像によると、右膝に変性所見が認められることに鑑みれば、後遺障害の程度としては、局部に神経症状を残すものとして14級10号に該当すると認めるのが相当である。

原告は、被告の右膝にはもともと変性所見があったのであるから、素因減額をすべきと主張するが、右膝の変性は加齢性のものと解されること、本件事故直後の診断では特に異常はないと診断されていたこと、本件事故以前に右膝の痛みを訴えて治療を受けるなどしていなかったことに鑑みると、素因減額の対象となるような疾病であったとは認められない

前記の後遺障害の程度からすると、被告は、5年間にわたり、5%の労働能力を喪失したものと認めるのが相当であり、前記のとおり、被告の基礎収入は年収385万3800円と認めるのが相当であるから、中間利息年5%をライプニッツ方式により控除すると、逸失利益の額は下記の計算式により83万4232円となる。