重要判例【大阪地判平成26年9月11日】歩行障害は既往の右片麻痺が原因とも疑われ、自賠責12級7号後遺障害認定も逸失利益否定
1 後遺障害について
E病院において、右膝関節部の前方引き出し現象が認められていること、リハビリ中に短下肢装具を装着していることなどに照らせば、原告の右膝について動揺関節の後遺障害が残存していると認められる。
この点、①事故直後に入院したC病院及びD病院の診療録において、右膝靱帯損傷に関する記述が認められないこと、②E病院においても、初診時に血腫水腫がなく、平成19年11月19日に行われたMRI検査においても「前十字靱帯の損傷はっきりせず」との診察であったこと、③原告には、右片麻痺などの既往歴があり、本件事故直後から右下肢運動の評価が困難、本件事故による外傷前から右足首運動、足指運動不可と診断されており、原告が立位・歩行に際し、常時装具を装着する状態であるのは本件事故前の既往を原因とするものとも疑われることからすると、④本件事故以前は杖なしで2、3㎞は歩行可能であったとしても、本件事故による原告の後遺障害の程度としては、「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として12級7号に該当すると認めるのが相当である。
2 逸失利益について
①原告は、平成13年頃まではG会社から月額30万円の給与を得ていたものの、平成13年頃以降は現在まで給与の支給を受けていないこと、②本件事故前に原告がG会社で行っていた作業は電話対応、食事の配膳等であること、③一方で、本件事故後、G会社が原告の代替となる労働者を雇用してはいないことが認められる。
以上の各事実によれば、原告には本件事故後の減収が認められない上、原告が主張する額の収入を得る蓋然性も認めるには足りないから、逸失利益は生じていないといわざるを得ない。