重要判例【東京地判平成27年3月3日】玉突き追突された31歳女子保健所職員には画像・神経学的異常なく症状は1月を超えないと認定、脳脊髄液減少症等否定

1 本件事故態様、画像所見及び神経学的所見のいずれにも異常は認められないこと、本件事故後原告を診察したA医師以外の医師の診断内容を総合すると、原告は、本件事故により、外傷性頸部症候群、脳震盪により、首、背中、頭に痛み、右手にしびれ、吐き気等の症状が出たものの、本件事故と相当因果関係が認められる症状は、本件事故から1月を超えないと認めるのが相当である。

原告は、本件事故前には事故後発症した症状はなかったと主張する。

しかし、原告は、平成21年7月10日及び平成22年2月27日に、視野が欠ける感じがした後ひどい頭痛がする、このような事は何度かあったと申告して、J病院でMRI検査を受けたこと、本件事故約1週間前の平成23年10月25日に、Hクリニックを受診し、最近2週間位倦怠感があると述べて血液検査を受けたことが認められ、原告の上記主張は、にわかに採用できない。

2 原告は、本件事故により脳脊髄液減少症を発症し、これに起因して胸郭出口症候群を生じた、その根拠は、CTミエログラフィーで髄液の漏出像が見られること、MRミエログラフィーの所見及び起立性頭痛が認められることであると主張し、B医師は、その旨診断し、意見書を作成する。

しかし、B医師の上記意見書の記載内容には、①B医師作成の紹介患者経過報告書の記載内容と合致しない点があること、②CTミエログラフィーの画像所見は「造影剤の漏出を疑う高吸収域あり。」というものであって確定診断とはいえず、B医師自身、上記紹介患者経過報告書においては、CTミエログラフィーについて触れていないこと、③B医師は、脳脊髄液減少症と診断しつつも、これに対する治療を行わず経過観察としていること、④原告は、B医師に対し、起立性頭痛であると申告しているが、原告は、自ら低髄圧症候群を疑い、その確認のためにG病院を受診しているから、原告の申告には原告の低髄圧症候群に対する知識が反映している可能性があること、⑤E大学病院の担当医師は、原告の頭痛症状からすると低髄圧症候群の可能性は少ないと判断していることに照らし、上記B医師の診断及び意見書は採用できない。

なお、F整形外科のC医師は、原告の本件事故後の症状は、本件事故による外傷性頸部症候群である旨の意見書を作成している。

しかし、その根拠は、本件事故前には出現していなかったというのみであるところ、上記のとおり、その点には疑問がある上、交通事故以外の原因により頭痛、しびれ等の症状が発症する可能性もあるから、上記意見書も採用できない。