重要判例【東京地判平成26年11月17日】54歳女子主張の8級RSDを否認、12級13号神経症状と認定し72歳までの逸失利益認定
1 RSDの後遺障害該当性について
原告らは、RSDにより可動域制限が生じたとも主張するところ労働者災害補償保険の障害等級別認定基準によれば、神経損傷が明らかでないRSDについては関節拘縮、骨の萎縮、皮膚温の変化が認められる必要があるところ、原告Aにおいて、関節拘縮と皮膚温の変化は認められるものの、平成25年7月22日及び同年8月19日におけるレントゲン画像において骨の萎縮は認められない。
原告らは、平成20年9月2日以降に骨萎縮が改善された可能性を主張するが、症状固定後に骨の萎縮が認められない以上、原告に、本件事故によって罹患したRSDによって、改善が見込めない関節拘縮が生じ、可動域制限が残存したと認めることはできない。
・・・したがって、原告Aに、平成22年2月9日付け後遺障害診断書に記載された可動域制限が残存するとしても、その発生機序は明らかでない。
以上によれば、平成22年2月9日付け後遺障害診断書に記載された可動域制限は、本件事故と相当因果関係があるとは認められない。
原告Aに認められる後遺障害は、左足関節から足背にかけての痛み及び左下肢遠位部のしびれ等、他覚的な局部の神経症状の残存にとどまるというべきであり、後遺障害等級12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当し、後遺障害による労働能力喪失率は14%であるということができる。
2 労働能力喪失期間について
労働能力喪失期間について、原告らは、余命の1/2である16年間(72歳まで)を主張するところ、原告Aが訴える症状やこれまでの経緯をふまえると容易に回復するとは言い難く、16年間の労働能力喪失を認めることとする。
基礎収入について、実所得は低額であり、主婦として算定することになるところ、平成22年賃金センサス女性学歴計全年齢の年収は345万9400円であるが、60歳以降は顕著に低額化することに照らし、65歳までは同額、65歳以降はその80%とするのが相当である。
3 営業損害について
原告Aの受傷による損害の賠償を請求しうるのは直接被害者である原告Aであり、原告Bが、同人が代表を務める会計事務所に営業損害が生じたとしてその損害の賠償を請求するためには、原告Aと同会計事務所との間に経済的一体性が認められることが必要である。
原告Aは、原告Bが営む会計事務所で、顧客周りや行政機関への対応、パソコン入力や書類作成等を行っていたもので、その職務内容に照らし会計事務所の機関であるとは認められず、原告Bが営む会計事務所との間に経済的に一体をなす関係にあると認めることはできない。
したがって、原告Bによる会計事務所の営業損害にかかる損害賠償の請求は認められない。