重要判例【神戸地判平成26年10月1日】症状固定時期、自賠責非該当の右肩関節可動域制限を考慮し後遺障害慰謝料を増額
1 症状固定時期について
原告の後遺障害診断書には、Aクリニックの医師により、平成24年4月4日が症状固定日と記載されているところ、被告らは、症状固定日は遅くとも平成22年12月末であるとして、これを争う。
証拠及び弁論の全趣旨によれば、①原告は、本件事故により右肩腱板断裂の傷害を負い、Aクリニックにおいて、平成21年11月3日から同月5日まで入院して右肩腱板修復術及び右肩関節授動術(右肩関節拘縮に対するもの)を受け、退院後も平成24年4月4日まで通院治療を受けていたこと、②この間、Aクリニックにおいて、原告に対し、主としてリハビリ、具体的には関節可動域運動、筋力増強訓練、腱板訓練が繰り返され、平成23年3月12日ころには右肩はずいぶん動くようになったが、痛みが残存しており、ノットインピンジメント(縫合糸の肩峰下面への物理的な接触により肩峰の菲薄化、骨浸食が生じる。)の可能性が指摘されたこと、③同年4月30日、原告は、CT検査の結果、肩峰の菲薄化があると指摘され、抜糸を薦められたが、半年に1回程度肩峰の状況を確認して最終段階での抜糸も可能であるとの説明を受けたこと、④その後、原告は、同年10月1日、CT検査の結果、ノットインピンジメントの進行はなく、平成24年4月4日、ノットインピンジメントの悪化はなく、現段階での再手術は不要との判断に基づいて、同日、症状固定の診断を受けたことが認められる。
ところで、症状固定とは、療養をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したときをいうものと解されているところ、前記事実によれば、原告に右肩腱板修復術が実際された後は、リハビリが中心となったが、リハビリにより症状は次第に改善され、平成23年3月ころ以降、大きな変化はなくなってきたものの、残存する痛みに対して再度手術を実施するかどうかを判断するために経過観察が行われ、再手術は不要との判断に至ったところで、症状固定と診断されているのであって、特に平成23年3月以降、積極的な治療や症状の顕著な改善等があったわけではないが、必要な経過観察の期間を経て、さらなる療養が不要であり、最終の状態に達したと判断されたことからすれば、平成24年4月4日をもって症状固定に至ったという医師の診断に特段不合理な点はない。
2 後遺障害慰謝料について
原告は、本件事故により右肩腱板断裂等の傷害を負って、右肩の疼痛等の症状が残存したことにより、仕事に支障が生じただけでなく、日常生活においても不便が強いられ、また趣味のジャズダンスを十分に楽しむことができないこと、自賠責保険において、後遺障害等級14級9号に該当するものと認定されたこと、自賠責保険の後遺障害には該当しないものの、右肩関節に可動域の制限も残っているなど諸般の事情を考慮すれば、後遺障害慰謝料として、140万円を認めるのが相当である。