重要判例【仙台地判平成26年9月17日】不安神経症による事故後2週間後からの入院の相当性、治療期間(8か月)の相当性
1 入院の相当性について
被告は、A整形外科への入院は、必要性を欠くと主張するところ、A整形外科に入院した当時、原告(女・28歳)には、強い頸部、背部、腰部の圧痛と頸椎と腰椎の運動制限があり、「このまま治らないのではないか」とういう不安神経症が鬱病に移行する危険もあったため、不安を除き、安静を保ちながら、頸椎・腰椎の矯正と、両上肢、下肢、頸部、腰部の筋力訓練といった治療に専念するために、入院が必要であると医師が判断し、原告がこれに従ったことが認められる。
以上によれば、入院が必要であるとしたA整形外科の医師の判断をもって合理性を欠くということはできない。
入院当時の原告の主たる症状が不安神経症であったとしても、それは本件事故で受けた傷害に起因する身体の痛みや運動制限から来るものであり、本件事故により突然強い痛みやしびれに悩まされることとなった原告の状況に照らして異常な反応であるということもできず、入院治療の必要性が認められない旨の被告の上記主張は採用することができない。
2 治療期間について
被告は、本件事故による受傷の内容に照らし、治療に必要な期間は、どんなに長くても受傷後3か月までであると主張する。
しかし、本件事故の態様が、全く予期していない状態の原告に背後から突然衝撃が加わり、原告が倒れたというものであること、原告は、本件事故当時、以前からの夢であったエステティシャン・セラピストの仕事に従事しており、本件事故後も早期の職場復帰を希望していたのであり、治療期間中に訴えた頸部や腰部の痛み、左上肢のしびれ等が心因性のものであったことを窺わせるべき事情は存しないこと、受傷から症状固定まで約8か月間を要した本件の経緯が頸椎捻挫や腰椎捻挫の治療期間として異常に長いとまではいえないことなどを総合すると、原告が症状固定の診断を受けるまでに受けた治療について、本件事故との相当因果関係を認めるのが相当であり、被告の主張は採用することができない。