重要判例【東京地判平成23年10月17日】弁理士の休業損害、後遺障害逸失利益(疼痛(12級13号)、疼痛・緊張(14級9号)併合12級)、素因減額

1 休業損害について 

原告(男・症状固定時73歳・弁理士)の平成15年から平成20年までの弁理士業務による営業所得は次のとおりであり、平成17年に大きな落ち込みが見られるが、その後2年連続で増加し、本件事故前年の平成19年には平成16年と同程度の水準まで回復している。

以上によれば、弁理士業務に関する休業損害算定の基礎収入については、本件事故前年の平成19年の営業所得1876万3215円とするのが相当である。

2 ・・・本件事故の日から症状固定日までの412日間の原告の休業状況は、全日休業154日、半日休業120数日であることが認められる。

上記の半日休業を所定終業時間の半分を休業したものとすると、原告は、就業日の8割程度を休業したことになる。

しかしながら、原告は、本件事故後、限定的ではあるが、比較的早期の段階から就労を再開している。また、特許侵害訴訟事件の訴訟代理人としての業務や特許庁審判官等との面接など原告以外の者には代替できない業務もあったが、A特許事務所には技術職職員等の職員もおり、A特許事務所はB社の補助も受けていた

以上に加え、原告の後遺障害は、後遺障害等級併合第12級に該当することも併せると、原告は、本件事故の日から症状固定日までの感、労働能力を平均6割喪失したものと認めるのが相当である。

2 逸失利益について

逸失利益算定の基礎収入については、労働能力喪失期間というある程度長期間を通じて取得できる蓋然性のある金額とすべきであり、本件事故以前の原告の弁理士業務による所得は、前記のとおり変動があり、安定しているとは言い難いから、弁理士業務に関する逸失利益算定の基礎収入は、平成15年から平成19年の5年間の営業所得の平均額1428万2413円とするのが相当である。

本件事故後も原告のB社からの収入は減少していないが、B社は、A特許事務所の補助を業務としており、その業績はA特許事務所の業績と密接な関係があると推認される。

そうすると、今後も、原告がB社から本件事故以前と同程度の収入を得られるかは定かであるとはいえないから、B社からの収入600万円も逸失利益算定の基礎収入に含めるのが相当である。

3 素因減額について

原告は、本件事故後、腰部脊柱管狭窄症を発症し、本件事故後のMRI上、椎間間隙の狭小化が目立つとされ、第二/第三腰椎から第四/第五腰椎間等に椎間板の後方膨隆、骨棘形成、黄靱帯肥厚が認められるなどとされているが、本件事故時、73歳であり、本件事故前は、下肢のしびれや疼痛はなく、ゴルフや水泳等の運動も行っていたことが認められ、経年性の脊柱管狭窄がどの程度のものであったかは不明であることにも照らすと、被告らの素因減額の主張を採用することはできない