重要判例【大阪地判平成26年1月21日】車両買換諸費用、経済的全損、代車費用

1 車両買換諸費用について

➀検査登録手続費代行費用・・・〇

➁車庫証明手続代行費用・・・〇

➂検査登録法定費用・・・〇

➃車庫証明法定費用・・・〇

➄リサイクル預託金・・・〇

➅印紙代・・・〇

➆自動車税、➇自賠責保険料・・・×

(理由)自動車税及び自賠責保険料については、車両の取得ではなく保持のために必要な費用であり、買替という行為に伴って生じる費用ではないから、本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない(なお、買換先の車両分ではなくて事故車両自体の自動車税及び自賠責保険料を損害とするのであれば、これらは制度上車検期間未経過分につき還付を受けられるものであり、いずれにせよ損害となるものではない。)。

➈下取車査定料・・・×

(理由)従前車両の引き取りのために要する費用であって、買換によって当然に必要となる費用ではないから、本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。

2 経済的全損法理の適用について

経済的全損法理の根拠は被害者側の損害拡大防止義務にあるものと考えられ、信義則(民法1条2項)を一応の根拠とするものと考えられる。

そして、その具体的な内容としては、当事者の公平の観点から、不法行為を受けた被害者はその損害回復に当たって、損害額が最小となるような方法を適宜選択すべきであり、それをせずに拡大した損害部分については、不法行為と事実的因果関係のある損害であっても、加害者に賠償義務を認めない、というものである。

このように考えると、損害拡大について、被害者の予見可能性や予見義務、回避可能性が否定される場合には、信義則及び損害の公平な分担という不法行為の法理に照らし、時価額を超えた修理費用等について、加害者が賠償すべき損害として認めることもありうる

3 代車費用について

原告車両はレクサスであり、本来的には特段の事情がない限り国産高級車ないしそれに準じるクラスの代車使用が認められるところ、仮に原告が、一般的な事案における買換相当期間と思われる一か月強程度の期間についてこのクラスの代車を用いていたとしても、その費用総額は原告が主張する54万1800円と比較して、有意な差が出るほど低廉で済むとは思われず、むしろより高額になる可能性すら十分にあるものと考えられる。

原告が代車を用いた期間自体はやや長期にわたるものの、単価については月額にして約13万5000円程度、日額にして約4500円程度と、レンタカー価格としては相当程度低い水準にとどまっており、結果として代車費用の総額が大きく拡大しているわけではないことを考慮すると、原告が修理を選択し、その間代車を用いたことによって、代車費用が著しく増えたと評価できる状況にはない。

・・・このようなことを考慮し、本件においては、原告が主張する代車費用全額について、相当なものと認める。