重要判例【福岡地判平成26年2月13日】兼業主婦の休業損害、既払い保険金の充当関係
1 兼業主婦の休業損害について
➀基礎収入
原告(事故時・症状固定時42歳)は本件事故当時、夫と二人で生活しており、家事に従事するほか、株式会社Dにおいて、アルバイトのテレフォンアポインターとして、午前9時から午後6時までのフルタイムで勤務していたことが認められる。
このような兼業主婦の場合、専業主婦についても、女性労働者の平均賃金額を基礎として、家事労働に従事できなかった期間について休業損害が認められることとの均衡等に鑑み、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎収入とするのが相当であると解される。
➁休業期間
原告は、実通院日数が337日であるとして、この日数分の休業損害を求めているが、休業損害の趣旨からいって、この主張には理由がない。
原告は、本件事故後1か月間は株式会社Dを休業したこと、基本給に該当するものと思われる「請負手数料」の支給が本件事故後に相当減少していることから、出勤日数も相当減少したことがうかがわれること、出勤困難の程度と家事従事困難の程度とは相関関係にあるものと解されること等に鑑み、3か月間の休業損害を認めるのが相当である。
2 既払い保険金の充当関係について
原告は、被告の任意保険会社の既払金は、先ず遅延損害金に充当されるべき旨主張するが、任意保険会社から支払われた任意保険金については、治療費相当額は直接医療機関に支払われており、その余の支払についても、損害費目ごとに特定されて支払われたことが認められるのであって、任意保険会社と原告との間で、損害賠償金の元本に充当するとの黙示の合意があったものと解されるから、この主張は採用しない。
そうすると、損害賠償金元金から既払金を控除した残額は、416万2766円となる。