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【交通事故㉛】サラリーマンや会社役員の逸失利益はどのように算定するの?
2 サラリーマン(給与所得者)の場合は、源泉徴収票等により証明することができます。
現実の収入額が賃金センサスの平均賃金額を下回る場合は、現実の収入額を基礎とするのが原則ですが、比較的若年(おおむね30歳未満)の被害者であって、将来、賃金センサスの平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が高ければ、平均賃金を基礎に算定することもできます。
裁判例を見ますと、①17歳男子アルバイトにつき、賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎としたもの(仙台地裁平成20年2月27日判決)、②短大卒21歳女性に、現実収入(月額13万円)ではなく、賃金センサス女性短大卒全年齢平均を基礎としたもの(横浜地裁平成17年9月22日判決)などがあります。
3 会社役員については、報酬のうち利益配当にあたる部分は労働の対価としての性質を有しないので、収入から控除されます。
裁判例を見ますと、44歳男性につき、年収1620万円の中には利益配当も含まれており、同収入の7割を基礎としたもの(大阪地裁平成7年2月27日判決)などがあります。
ただし、死亡事故で、利益配当部分が遺族に承継されない場合は、これも逸失利益となります。
4 将来の昇給については、勤務先に昇給規定等があり、被害者がそれに従って昇給する可能性がある場合は、昇給を考慮して収入を算定することができます(仙台地裁平成17年7月20日判決、東京地裁平成13年2月22日判決)。
しかし、最高裁昭和43年8月27日判決は、昇給規定がなくても、将来の昇給が証拠に基づいて相当の確かさをもって推定できる場合には昇給を考慮することも許されるとして、22歳の会社員の死亡事故につき、死亡の前日の給与額を基準とし、死亡後4年間は死者と同程度の学歴、能力を有する同僚の実際の昇給率により、その後18年間は前4年間の平均の昇給率により、その後定年までは年5%の昇給率によって算定することを認めています。
また、東京地裁昭和47年7月18日判決は、昇給規定のない小企業の若年労働者につき、昇給を加味して算定することを認めています。
5 退職金については、勤務先に退職金規程がある場合は、死亡時に勤務先から支給された退職金と、定年まで勤務すれば得られたであろう退職金額との差額が逸失利益(中間利息を控除します)となります(東京地裁平成16年1月20日判決、東京地裁平成13年2月22日判決)。
また、後遺症により退職してしまった場合、定年まで勤務した場合の退職金額から現実に支給された退職金との差額を逸失利益(中間利息を控除します)として認める場合があります(大阪地裁平成17年3月25日判決)。