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【交通事故㉘】自賠責保険の注意点は?
自賠法14条は、保険契約者又は被保険者の悪意によって生じた損害については、自賠責保険会社の免責を定めています。
これに対して、加害者に重過失のある場合であっても、自賠責保険は支払われます。
具体的には、後遺障害または死亡事案では、
① 被害者過失7割未満では減額されない。
② 被害者過失7割以上8割未満で2割減額
② 被害者過失8割以上9割未満で3割減額
③ 被害者過失9割以上10割未満で5割減額 しかしない扱いです。
傷害事案では、7割未満では減額されず、7割以上で一律2割減額されます。
注意すべきは、被害者の過失割合が10割の場合には、加害者には全く責任がないということになりますから、被害者としてはそもそも自賠責保険の保護を受けられません。
なお、訴訟になった場合、支払い基準は裁判所を拘束しないため(最高裁平成18年3月30日判決)、上記の重過失減額の取扱いはされません。
また、自賠責保険は、法的な加害者の責任の範囲が訴訟で明らかになった場合は、その限度でしか支払われません。したがって、被害者の過失割合が大きい場合には、訴訟で受領する損害賠償額よりも自賠責保険金額の方が高額になることもあり得、これが予想される場合には、訴訟を提起する前に自賠責保険への請求をしなければなりません。
2 因果関係の有無の判断が困難な場合
被害者が既往症等を有していたために受傷と死亡・後遺障害との間の因果関係の判断が困難な場合にも、保険金額から5割の減額がなされます。
3 仮渡金制度
保険会社に対する保険金請求権は、被保険者の賠償責任の有無および額が確定して、初めて行使することができるのが原則です(本請求)。
しかし、これらについて争いがある場合などには、被害者は長期間、損害賠償金の支払いを受けられず、治療費や葬儀費など当座の出費にも窮することになります。
そこで、自賠法17条は、人身事故の被害者は、保険会社に対して、一定の額(死亡の場合で290万円、傷害の場合はその程度に応じて40万、20万、5万円の3段階)を、損害賠償額の支払いのための仮渡金として請求できることを定めています。
仮渡金を保険会社に請求する際に必要となる書類は、①支払請求書、②請求者の印鑑証明書、③交通事故証明書、④事故発生状況報告書、⑤診断書などです。
なお、被害者が治療継続中などのため総損害額が確定しない場合でも、既に発生したことが立証できる損害については、損害賠償額の内払いを請求できるとする内払制度がありましたが、治療継続中でも本請求を認める実務が一般化しているため、内払制度は、平成20年10月1日より廃止されました。
4 消滅時効
加害者請求、被害者請求の請求権ともに3年で時効消滅します。
被害者請求権の事項の起算点は、「損害を知った時」と解するのが一般的です。
これは、原則として事故日ですが、後遺障害については後遺症が発現した日(症状固定日)になります。
民法上の時効と異なり、当事者が援用しなくても当然に被害者請求権が消滅するので注意が必要です。
したがって、交渉が長引くときには、自賠責保険所定の時効中断申請書を提出して承認書を得るようにします。
5 複数の自動車による交通事故で損害賠償責任を負うべき運行供用者が複数存在し、いずれも自賠責保険が付されている場合(1台の自動車のみ有責で、その運行供用者が複数であるような場合は異なる。)には、複数の自賠責保険から支払を受けることが可能であり、保険金はその複数倍まで支払われることになります(いわゆるダブルポケットの事案)。
したがって、このような事故の被害者請求では、損害額が一保険金額の範囲内であれば一保険会社に請求するだけで足りますが(この場合、自賠責保険は最終的には自賠責保険プールで決済されるので、自賠責保険相互間においては求償は行われません。)、それを超えるときは各保険会社に請求する必要があります。