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【交通事故⑥】「被害者請求」と「事前認定」のちがいは?

後遺障害等級認定手続きとして、「被害者請求」にするか、「事前認定」にするかで、どのような違いがあるのですか?
1 事前認定

事前認定とは、加害者に対人賠償保険があり、一括払いがなされる場合に後遺障害等級認定を受ける制度です。

対人賠償保険会社は自賠責保険会社に対する求償権を行使できることを前提として一括払いに応じているため、将来の回収可能性を判断するために、対人賠償保険会社が後遺障害の有無及び程度(等級)に関し損害保険料率算出機構の下部機関である自賠責損害調査事務所に関係書類を送付し、損害調査を依頼して確認しておく制度です。

手続きを行う手間がかからない

事前認定を行う場合には、任意保険会社に対して、病院に問い合わせたり資料を取り寄せたりすることに関する同意書と後遺障害診断書を提出しておけば、あとは任意保険会社が手続きを行ってくれるので、手間がかかりません。

訴訟を起こす場合には、受け取る金額が大きくなる

仮に訴訟を起こすことがあれば、賠償金に対する事故時からの「遅延損害金」(5%)というものが付加されます。

この「遅延損害金」の金額は、判決で認められた賠償金額が多ければ多いほど増えます。

事前認定では、自賠責保険から損害賠償額をあらかじめ受け取らないしくみになっているため、後々受け取る金額は大きくなります。

2 被害者請求

自賠責保険の被害者請求をする場合には、被害者が自賠責保険会社に請求書を提出することによって後遺障害等級認定を受け、自賠責保険会社を通じて調査事務所の調査結果の通知を受けることになります。

事前認定と異なり、後遺障害診断書を提出した後、不足している医証等があれば調査事務所から被害者に提出が求められます。

被害者は医療機関からレントゲン、CT、MRI等のデータが入ったCD等の交付を受けて提出することになります。

事前にまとまったお金が入る

被害者請求を行い、後遺障害等級が認定されれば、その等級に応じた損害賠償金を受け取ることができます。
そのため、被害者請求を行えば、最終的な示談交渉を行う前に、ある程度まとまったお金を手にすることができるため、経済的な余裕が生まれます。

提出した資料を把握することができる

被害者は、事前認定で手続きを進めると、どのような資料が任意保険会社から認定機関に提出されたのかを知ることはできません。
場合によっては、任意保険会社の顧問医の意見書が添付されることがあり、この意見書の内容によっては、被害者にとって不利な認定となる場合もあります。
被害者請求であれば、このようなことが起きないように、提出書類をチェックすることができます。

後で訴訟を起こすとき、印紙代が安くなる

訴訟を起こすときに裁判所に納める印紙代は、訴訟で請求する額が大きくなればなるほど高額になっていきます。
したがって、被害者請求で事前にお金を手に入れておけば、訴訟のときに請求する金額がその分少なくなり、印紙代も安くなります。 

3 自賠責保険等の被害者請求の方が訴訟と比べて、被害者に有利な取扱いを受けられる場合があるので、訴訟提起前に被害者請求を済ませておくことが望ましいことがあります

すなわち、自賠責保険等では、自動車事故被害者の保護・救済(自賠法1条)及び大量事案の公正・迅速な処理を行う要請から、裁判所による法的な損害学の算定とは異なって、被害者に有利な取扱いが行われています。

詳しくは、【交通事故㉘】をご参照下さい。