お知らせ【フランチャイズ契約㉗】フランチャイジーの債務不履行を理由とする解除
では、例えば、フランチャイズ契約書に「ロイヤルティ等の支払を1回でも怠れば催告なしに解除できる」と規定されている場合、この規定通り、フランチャイザーは無催告解除をすることができるのでしょうか。
2.この点、裁判所は、フランチャイザーによる解除が認められるためには、当該義務の内容や性質、義務違反の具体的態様および程度等を総合的に勘案して、当事者間の信頼関係の破壊によりフランチャイズ契約を継続しがたい事情が必要であると判断しています(東京地判平成14年10月16日)。
3.具体的には、どのような事情があれば、フランチャイザーは有効に解除できるのかを判断するにあたり、いくつかの裁判例をご紹介します。
①ロイヤルティの未払については、わずかな未払いや支払遅延では、当事者間の信頼関係が破壊されたとはいえないので、契約解除は認められません。裁判においてフランチャイザーによる契約解除が認められた事案は、未払が数か月に及んでいたり、フランチャイザーによる再三の催告や業務改善指導を経たにもかかわらずフランチャイジーが是正しなかった事案です(東京地判平成19年3月15日、東京地判平成20年9月25日)。
②商品の品揃えや店舗の衛生状態は重要な店舗のイメージを構成しており、当該チェーンに対する消費者の信頼を基礎づけるため、フランチャイジーが店舗での商品管理や衛生管理を著しく怠った場合は、フランチャイザーによる解除が認められています(東京地判平成14年5月17日、東京地判平成14年10月16日)。
③秘密保持義務や競業避止義務はフランチャイザーのノウハウ保護のために必須の義務なので、フランチャイジーがこれらの義務に違反して営業秘密を第三者に開示したり、ほかの同種フランチャイズ・チェーンに加盟した場合、フランチャイザーによる契約解除が認められます。ただし、重大な契約違反といえないような場合には、フランチャイザーとしては、フランチャイジーに対して催告手続を行い是正の機会を与えないと解除できません(東京地判平成18年11月10日、東京高判平成8年3月28日)。
④顧客とのトラブルはチェーン全体の信用を害するので、著しい場合には契約解除原因となります。住宅リフォームのフランチャイズ・ビジネスにおいて、フランチャイジーが顧客から多数の苦情やクーリング・オフを受けた事案で、フランチャイザーによる契約解除が認められています(東京地判平成21年7月10日)。