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今日は、飲食店における非混雑時間帯の休憩時間該当性に関する裁判例を見ていきましょう。
月光フーズ事件(東京地裁令和3年3月4日・労判1314号99頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と労働契約を締結し就労していたXらが、Y社に対し、労働契約に基づき、X1につき①平成28年10月分から平成30年9月分までの未払割増賃金合計1999万9769円並+遅延損害金、②平成30年6月分から平成30年9月分の未払月額賃金合計20万円+遅延損害金及び③上記未払割増賃金に係る労基法114条に基づく付加金として平成29年4月分から平成30年9月分までの法外割増賃金相当額である1468万1415円+遅延損害金の支払を求め、また、X2につき④平成29年5月1日から平成30年12月31日までの期間分の未払割増賃金から既払額を差し引いた残額合計492万6670円+遅延損害金及び⑤上記未払割増賃金に係る労基法114条に基づく付加金として平成29年11月分から平成30年9月分までの法外割増賃金相当額である455万8363円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
1 Y社は、X1に対し、2072万0714円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、X1に対し、20万円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、X1に対し、1468万1415円+遅延損害金を支払え。
4 Y社は、X2に対し、489万1905円+遅延損害金を支払え。
5 Y社は、X2に対し、453万0871円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 労基法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、同労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。
本件においては、ランチタイムの営業時間とディナータイムの営業時間の間においても、Xらが業務に当たっており、業務以外の理由で店舗を離れることはできなかったことからすると、当該時間はXらがY社の指揮命令下にあった時間帯というべきであり、労働時間に該当すると解するのが相当である。
2 本件就業規則及び本件給与規程の施行日の月日は空欄となっており、また、X1及びX2ともに本件就業規則等を見たことがなくその説明を受けたこともないと述べていることからすると、本件就業規則及び本件給与規程がいつから施行されたものであるのか、現に施行されているのか、周知がなされているのか、明らかでないと言わざるを得ない。そして、仮に本件就業規則が有効であるとしても、本件就業規則においては毎月1日を起算日とし、所定労働時間を1か月を平均して週40時間以内とする1か月単位の変形労働時間制による労働をさせることがある旨規定されているが、各日、各週の労働時間は前月末日までに勤務表を作成して従業員に周知することとされており、それ以上の詳細な定めはないため、各日の勤務時間やその組み合わせ等が勤務表においてどのように定められるのか就業規則から推認することができない。また、本件雇用契約書及び本件労働条件通知書にも1か月単位の変形労働時間制に関する記載があるが、本件就業規則以上の詳細な規定はない。さらに,実際に作成されているシフト表を見ると、各従業員の各日について記号が付されているものの各記号の示す始業時間及び終業時間並びに休憩時間がシフト表上一義的に明らかでなく、各日の勤務時間がシフト表上明らかにされているとはいいがたい上、仮にシフト表上「○」と記載されている部分の一日の勤務時間を8時間と解したとしても、例えば平成29年10月分のシフト表ではX1につき「○」が27日あり合計216時間、X2につき「○」が24日あり合計192時間となり、1か月の変形労働時間制における労働時間の総枠(1か月31日の月では177.1時間)を超えたシフト表が組まれている。
これらの点からすれば、Y社の主張する変形労働時間制が有効であるとは認められない。
休憩時間、管理監督者、変形労働時間制、固定残業制度のいずれも否定されました。
特に管理監督者と変形労働時間制は有効に運用するのは至難の業です。
また、飲食店において、上記判例のポイント1のような運用がなされていることは珍しくありませんが、法的には休憩時間とは評価されません。わかっていてもマンパワー的に無理なことも理解しております・・。
日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。